人を動かす対話術 7

ASIN:9784844373223

P216 不安定な愛着な人へのアプローチ

  • 愛着理論 ジョンボウルビィ(1907-1990)
  • 母親と安定した愛着の絆をもつことができた人は、その後も、その人にかかわる重要な他者と安定した愛着を築きやすく、それ以外の対人関係も安定しやすい。幼いころも愛着パターンは、大きくなってもあるていど恒常性をもって維持され、愛着スタイルとして固定していく
  • 愛着スタイルは、「愛着不安」と「愛着回避」という2つのファクターで理解される
  • 愛着不安、愛着回避の両方低い 安定型
  • 愛着不安が強い不安型、愛着回避が強い回避型、両方強い恐れ回避型
  • 統制型 不安定な愛着パターンを示す子供のなかには、親や重要な他者を脅かしたり喜ばせたりしてコントロールすることで、関係の安定を図ろうとするケースがある。これは統制型と呼ばれる
  • 安定型以外は不安定型 成人の1/3が不安定型愛着スタイルをもつと考えられる
  • 対話をする上で、相手がどういう愛着スタイルの持ち主かということを頭にいれておかないと、有意義な関係が築きにくい上に、無駄な努力ばかりが空回りしたり、善意のつもりがとんでもないトラブルになって、非常に嫌な思いをするという結果になりかねない
  • 愛着に応じた対話の方法
    • 安全基地になる(共感的なやりとり)、安全基地とは無関係な対話(利害、優劣、真偽をめぐる駆け引き)
  • よい安全基地の条件
    • 安全を保障し、安心感を高める。よい感受性。よい応答性。安定性。自由な主体性を保障
  • 不安型愛着へのアプローチ
    • 承認欲求が強く、拒否されたり見捨てられたりすることに過度の不安を抱いている
    • あなたの価値や能力を認めている。というメッセージをまめに発信する
    • 問題点を指摘されると、それを非難や攻撃と受け取ってしまいやすい
    • 「あなたのことを非難しているのではなく、あなたのやり方について指摘しているだけで、あなたのことは十分に認めているので誤解しないで冷静に聞いてほしい」
  • 問題点を指摘するには、少なくとも一つの肯定的な評価を与えてから行った方が受け入れやすい
    • 理屈で相手を説き伏せようとしてもあまり効果的でなく、逆に反発される場合もある。理屈で動くというよりも、感情で動くところが大きいのだ。したがって不安型愛着スタイルの人の心を動かそうと思えば、論理的に説得するよりも心に訴えかけることが重要になる
  • 回避型愛着の人へのアプローチ
    • 親密な対人関係を好まず距離を必要以上にとり、親しくなるのを避けようとするスタイル
    • 自分が関心のある話題にばかり熱中して話すことも多い。それを受け止める
    • 同じ興味や関心(仕事や趣味)を共有する
  • 自己愛的な人へのアプローチ
    • 周囲を支配しコントロールするという形の愛着の仕方を示す
    • 有害な側面は、共感性の乏しさと過剰な支配
    • 自己愛性パーソナリティ障害の治療に取り組んだのが精神分析医のハインツコフート(1931-1981)
    • 自己愛性パーソナリティ障害 過剰な自信や他者に対する尊大で共感性の乏しい態度を特徴とする状態で、自分を特別な存在とみなし、誇大な願望を抱き、周囲からも特別扱いや賞賛を期待する。それが得られないと激しい怒りやフラストレーションを感じる。実際に有能な人や成功者にも多いが、現実の人生が思い通りにいかないとひきこもりに陥ったり、思い通りになる存在を支配することで不満を紛らわせたりする
    • コフートは自己愛性パーソナリティ障害を、幼い頃に自己愛がよく充足されなかったことにより、構造的な欠陥を抱えた状態だと考えた。そして、特徴的な行動は、この心の血管を補うべきして起きてくるものであり、相手に心を開いて対話を行うときに、それが顕著に表れることになる
    • 対話法
      • 鏡になる技法 受容と称賛に徹する 「へーすごいですね。それで、どうしたの」と、ただ感心しながら聴き続ける
      • 理想化の重圧に耐える 自己愛性パーソナリティ障害の人に特徴的な転移様式。理想化転移。治療者をどんどん理想化して、すばらしい人物として過剰ともいえる尊敬やあこがれを向けてくる。言い換えると、自分を守り導いてくれる理想的な親を求める気持ちに応えることだといえるだろう
    • コフートは自己が自律的な心の構造を獲得していくためには、まず、自己対象から共感的な反応をほどよく与えられることが必要だという。そのプロセスが十分に行われるなかで、子供は自己対象が自分に示してくれる共感的な態度や受け止め方を、次第に自分のなかに取り入れていく。このプロセスをコフートは「変容性自己内在化」とよんだ
    • 自己愛性パーソナリティ障害の人は、自己対象から共感的な反応が不足したことによって、共感的な構造を十分に発達させることができなかったのである
  • 真に先生と呼ぶにふさわしい存在がすくなくなっていることが、自己愛の成長を停滞させる一因ともなり、未熟な自己愛がこの社会に氾濫するのを加速させている。
  • 人の教育や成長にかかわる仕事をしている人にとっては、理想化転移を受け止め、師としてそれにふさわしい振舞いをすることは、未来に対する責任なのである。