痛みとはなにか

関根龍一 痛みとはなにか JIN 2011;21(12):972-974

  • 1979 国際疼痛学会の痛みの定義
    • 痛みは知覚と情動にまつわる不快な体験であり、これには実質的または潜在的な組織損傷に関連するものと、そうした損傷があたかも存在するかのように表現されるものがある
  • この短い定義では伝わりにくいニュアンスを含んだ補足説明の記述があり、このなかからとくに重要と思われる項目を以下に列挙する
    • 痛みを言葉で伝えられない患者でも、痛みを経験している可能性を考慮すべきである
    • 痛みは常に主観的なものであり、患者が訴える痛みは、そのまま痛みとして理解する
    • 痛みの表現にはそれまでの人生における障害の経験が影響している
    • 痛みは、実質的または潜在的な組織損傷に関連付けられる経験そのものである
    • 痛みは常に不快であり、それゆえ痛みは情動体験でもある
    • 軽くピンでつつかれるなど、痛みに似ているが不快でない体験は痛みとは呼ばない
    • 病態生理上の明らかな以上がなくても痛みを訴える患者は多い。これは主に心理的な要因で生じる
  • 慢性痛には全人的苦痛(total pain)の考え方でアプローチする
    • このような慢性痛の患者では、痛みに対応する異常(現疾患病名)がないことに納得できず、各種医療施設を転々としながら、長期にわたり痛みに苦しむリスクが高くなる
  • 慢性疼痛患者を診るときのポイント
    • つらさの傾聴に徹し、患者と治療関係が構築できるように努める
    • 痛みに相応する器質的な異常がなくても痛みが続く患者は大勢いることを説明する
    • 痛みがあっても、日常生活が維持できることを目標に可能な援助をチームで行う
    • 困ったら一人で抱え込まずに慢性疼痛の専門家や精神科医に相談する