表圭一 痛み疾患の分類と痛みの発生機序 EBM ジャーナル 2005;6(4):400-408
- 1979 国際疼痛学会 IASP 痛みの定義
- 組織の実質的あるいは潜在的な障害に関連して起こる、またはこのような障害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚および情動体験
- 痛みは複雑な感覚情動体験であることが強調されている
- 分類
- 急性痛と慢性痛
- 急性痛 侵害受容性で、痛み刺激の解除や損傷の治癒とともに痛みは解除される。侵害受容性疼痛には、機械刺激、熱刺激や化学刺激などの侵害刺激により生じる一過性の痛みと、組織損傷やそれにひきつづく炎症による痛みが含まれる
- 最近では急性痛という言葉は単に疼痛期間によるものでなく、組織損傷に反応して起こる、知覚的そして情緒的な特徴を有する複雑な不快な体験、すなわち、組織損傷・炎症性の痛みをさすことが多い
- 生体が危害に曝されていることを示す警告信号としての重要な役割を示す
- 慢性痛 睡眠や日常生活に支障をきたすような、または健康や機能を低下させる持続性の疼痛
- 警告信号としての意味はもはやなく、むしろ無益な痛みで、この痛みは、疾患の一症状でなく、痛みそのものが疾患となる。患者の環境や情動は慢性痛を増悪させて無力感、不適応行動を示す
- 侵害受容性、ニューロパッシック、またはその混合した病態
- 病態生理学による分類
- 侵害受容性、ニューロパシック、癌性疼痛、心因性疼痛
- 侵害受容性
- 侵害受容器が興奮してAδ線維やC線維を介した痛み情報伝達により生じる痛み(生理的痛み)や、炎症反応を伴う組織損傷性の痛み(組織障害、炎症性疼痛)をさす
- 体性痛(表面痛、深部痛)、内臓痛(関連痛もある)
- ニューロパシックペイン
- 神経系の一次的損傷やその機能異常が原因となる、もしくはそれによって惹起される疼痛
- 障害神経の機能的構造的な変化と中枢神経における感作(可塑性)、構造的変化、脱抑制など多彩な機構の作動により、難治性の痛みを形成している。
- 癌性疼痛 腫瘍の部位、腫瘍の種類、浸潤の程度などにより、侵害受容性、ニューロパシック、さらに癌細胞からの痛みのメディエータ遊離、骨破壊などの多彩な機序が作動して痛みを形成している。