腰痛と精神疾患

吉田勝也 腰痛と精神疾患 精神科 2011;19(1):10-14

  • Schofferman 子供時代に親が薬物依存であったり、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、遺棄による心的外傷を受けると、成人してから慢性腰痛に罹りやすいと述べており、腰痛の背景にあるものが具体的に示されている。
  • うつ病では疼痛の訴えが多い。山家らのうつ病の心気症状に関する調査によると、うつ病の43%に疼痛の訴えが認められ、最も多いのが頭痛と腰痛で、両者とも33%であったという。また壁島は、うつ病の約65%に疼痛を認め、もっとも多いのは頭痛で、ついで腰痛を含む躯幹の痛みであると報告して言うR
  • Polatin 慢性腰痛患者の98%がDSMの第I軸診断のどれかを満たすと報告し、腰痛と精神疾患の密接な関連を示唆している
  • 岸本によると「痛み」は体の痛みであることが暗黙の前提とされているが、実は「心の痛み」と「体の痛み」を明確に分けることは難しいという
  • 最先端のペインクリニックの多くは、痛みは感覚でなくなくて知覚という定義を採用しており、知覚には神経系統だけではなく、心や情緒が必要である
  • 症例1は、救急救命センターに入院中に、医師の診察を受け、腰の重いのはとれないといわれ、検査も処方もされなかった。このとき医師が患者の訴えを傾聴し、様子をみたいので明日また来ます、ということで患者と医師の信頼関係ができ、患者の不安は取り除かれたかもしれない
  • Morrisは痛みの意味に関して、次のように述べている。人間の痛みの体験は、必然的に異味と出会わざるを得ない。痛みにとって重要な神経や神経伝達物質の網状組織はほとんど万人共通、すなわち、すべての人において同一であることは重bん証明できるかもしれない。しかし意味とは、人間の文化や個々人の心の変遷する過程にだけ現れるものである
  • 症例3や症例4に関して言えば、腰痛と自分にとって生きる拠り所となっていたものの喪失は、深い関連を持っているように思われる