- 痛みは、不快な身体的感覚を伴うものであるが、もはや「痛みは情動である」といっても全く過言ではない
- pain matrix
- 痛みを想像したときの脳活動
- 他人の痛みを痛そうと共感するだけでは、痛みの感情面に関する痛み関連領域しか活動しないが、自分の痛みとして想像した場合には、それらに加えて痛みの感覚的、判別的側面に関する痛み関連脳領域の活動が加わってくるのであある。このように痛みの主観性が、実際感じる痛みとその脳活動に与える影響は非常に大きい。
- 社会的痛み social pain
- 社会的な疎外を受けているときは、実際に痛み刺激が与えられなくても、身体的な痛みと類似の脳部位が活動する 2003 Science
- この報告以降、それまでどちらかというと感覚面を重視していた痛み研究が、情動面を含めた痛み体験へと関心対象が移ったといえる
- その後の社会的な痛みに関する研究では、近親者との死別、社会的に不当に扱われた(社会的評価が不当に低い)場合にも、主に前部帯状回や島前部等の痛み関連脳領域が活動することが報告されている
- ねたみの感情も、前部帯状回の活動を認め、痛み関連脳領域との関連が指摘
- ねたみの感情は、他人の不幸を願う気持ち(腹側線条体や眼窩前頭皮質(報酬系の活動)と相関関係
- 鎮痛メカニズムを探求する上で、この痛みと癒し(報酬系)の関係は、下行性抑制系とともに今後最も注目され、研究対象となる脳領域になるであろう
- 味覚のうち、鎮痛作用があるのは甘みのみであるようだ。心地よい香りにも気持ちの変化とともに、鎮痛作用が明示されている。
- 鎮痛に対する期待が起始点になって下行性抑制を出勤させていることがfMRI研究で示されている
- さらに最近のfMRI研究によると、「信じる者は救われる」ではないが、宗教心による鎮痛効果も客観的に証明され(placebo効果と同様の、前頭葉前部皮質の活動と脳幹の活動)、下行性抑制系の働きが痛みに対する鎮痛として作用していると推定されている
- われわれが痛みから手を引っ込めたりするのは、痛みが不快で嫌なものだからである。このnegativeな情動こそ、最も重要でありながら、これまで遅れていた研究分野である。昨今の脳神経科学による研究成果は、上述のように、情動面を含めた痛みというイベント自体に新たな光を照らし続け、その概念さえ変えようとしつつある