乾幸二 痛みの伝導路と侵害受容による脳反応 最新精神医学 2017;22(2):85-91
- 侵害受容器
- 高閾値機械的受容器 特異的侵害受容器 nociceptive specific;NS Aδ線維 脊髄第I層(Aδ)
- ポリモーダル受容器 広作動域 wide dynamic range ;WDR C線維の自由神経終末 脊髄第V層(AβとC)
- 前部帯状回の活動が感覚入力の種類にかかわらず共通
- MelzackのNeuromatrix概念をあてはめるなら、これらの痛みに直接関連しない諸活動のバランスによって痛みが発生する
- 痛みのメカニズムを明らかにするには、侵害受容視床核やそれが投射する第一次侵害受容野を含む侵害受容系を明らかにし、その経路のどこで痛みという内的体験が発生するかを再検討する方法と、そのような非特異的な構造はそもそも存在せず、様々な非特異的活動のバランスによって痛みが発生するものと考えて、広範囲の脳活動の時間的空間的活動パターンを詳細に調べる方法とがある
- 侵害刺激による脳活動の意義
- S1
- S2
- 島
- 島と前帯状回がタスク遂行に共通する部位であることを見出した
- 動物実験では、島の侵害受容細胞は複数の感覚系からの同時入力を受けることが多く、感覚入力を統合して一定の意義を持たせるのではないかと想像される
- 島が侵害情報の判別側面には関与せず、その後に生じる情動や行動ドライブに関わることを示唆する
- 島が侵害受容に調節的に関与はしているもの、痛み発現に不可欠というわけでないことを示している
- 前部帯状回
- 前部帯状回に侵害入力特異的細胞群があるかどうかについては明らかになっていない
- 少なくとも誘発脳波やfMRIで観察する前部帯状回の活動は、感覚入力による非特異的な活動と思われる
- この活動はS2などの後期活動から約50ミリ秒遅れて生じ、刺激頻度に顕著な影響を受けるので、各感覚系の変化(新奇刺激)検出を受けて活動すると思われる
- 自己意識と島と前部帯状回
- 前部帯状回破壊
- 特徴的なのは痛みとう感覚に対する陰性の情動が減少すること
- 難治性うつ病にも有効 有効な破壊部位は前方の情動領域でなく、認知領域である(24/32野)
- 副作用 自発性や内省、情動反応の鈍化とそれに伴う行動の減少
- 前部島が自己環境の意識と感情形成に関わることを示唆
- 自己意識形成に島ー前部帯状連合が重要な役割を果たしていると考えることができる
- 離人症 島の活性化が有意に減少