Clinical Neuroscience 2005;23(11) 帯状回 2

井沢優美、川上順子 痛みと帯状回 Clinical Neuroscience 2005;23(11):1253-1255

  • 痛みの伝導路
    • lateral pain pathway 感覚情報の部分に関与する経路で一次体性感覚野に投射し、主として痛みの部位、程度などを伝達する
    • medial pain pathway 複数の伝導路からなり、最終的に帯状回に痛み情報を伝える。痛みの高次機能といえる痛み記憶や痛みにともなう不快感、恐れなどの情動に関与
    • spinohypothalamic pain pathway 痛みにともなう自律神経活動
  • cingulotomy
    • 1951 Neilsen 両側帯状回の損傷症状を報告
    • 1953 Barris 両側帯状回の破壊を伴う脳内出血例 話ができない、無動状態といった典型的症状に加え痛みに対する反応が全く欠如していることを報告
    • 1967 Ballantine 重症の不安症、強迫神経症、難治性疼痛の患者の治療にcingulotomyを施行して鎮痛効果がえられる
    • Foltz cigulate cortexへ入力する神経繊維の通路であるfasciculus cinguliを破壊することで83%の患者に鎮痛効果を得た
  • 1989-1991 PETで、皮膚の熱刺激が人の帯状回において脳血流の増加を誘発
  • 1991 Talbotr PET-MRI ヒト 末梢皮膚への熱刺激により脳血流量が増加する皮質部位に、一次、二次体性感覚野と共に、帯状回が含まれることを解像度のよい画像で報告し、帯状回の痛み反応の研究に新しい光があたる
  • 帯状回で記録される痛み刺激の特徴
    • 対側か両側 Brodmann 24野に脳血流増加が観察される 注意により活動が増加する部位よりもやや後方、腹側
    • fMRI 痛みと非痛みの区別する部位、温度の高さを識別する部位、痛みの強さを識別する部位が、帯状回の中でそれぞれことなる
    • 帯状回は注意と関連のある中枢
    • 不安な状況下では同じ弱い刺激でも帯状回がより強く反応した
    • 帯状回は絶対的な刺激強度によるだけでなく、自覚的な痛みの強さや不快感により、その反応強度が変化することが観察された
    • 他人への痛みの共感の時、前帯状回の頭側と島皮質から反応が記録され、帯状回が痛みの情動的側面に関与していることが確認された
  • 帯状回は痛みに関する高次機能といえる記憶や情動といった側面を担っており、単純に痛み感覚を伝えているのではないことが示唆される
  • 帯状回が痛みの刺激強度だけでなく、自覚的な痛みの強さにも関係することが明らかになってきた