MB Med Reha 2007;79 1

中塚映政 痛みの概念、急性痛と慢性痛 MB Med Reha 2007;79:1-7

  • 症状としての痛みと病気としての痛みとの違いが明確になってきた
  • 痛みは数値で客観的に評価できないこと、医療者を含めた他人には理解できないこと、我慢することを美徳とする考えなどによって、主訴である痛みは軽視されていた
  • 国際疼痛学会で、患者の訴える痛みはすべて痛みであると定義、5つ目のバイタルサイン
  • 痛みは感覚でもあり、情動でもある
  • 一次痛
  • 二次痛 痛みの弁別に関与するだけでなく、情動、自律機能、記憶など様々な関係機能に影響を及ぼす
  • 慢性痛症 病変組織に起因する痛みを取り除いても残存する遷延性の痛み。神経系の可塑的な変化によって新たに生じる。病気としての痛み。決定的な治療法はない
  • 抗炎症剤やオピオイド鎮痛剤によって鎮痛効果が得られない場合、慢性痛症である可能背は極めて高い
  • 強い痛みが続くと神経系に歪みが生じて難治性の慢性痛症に移行することを医療者は認識しておかなくてはならない
  • 痛みを身体的な痛みだけでなく、全人的な痛みとして捉える必要がある
  • 痛みには身体的な問題だけでなく、社会的な要素、精神的な要素、哲学的な要素など複雑な問題が絡んでいる場合がある。したがって、医師だけでなく看護士、臨床心理士理学療法士職業訓練士、薬剤師などの各分野の専門家が患者を多角的に診察し、チームとして治療することが望ましい
  • 慢性痛症患者は痛みのために運動が制限され、筋拘縮が顕著となる。その結果ADLは低下して、抑うつ状態は助長され、病状はますます深刻な状態となる。したがって理学療法士職業訓練が積極的に慢性痛症に介入し、筋への適切な徒手療法や運動作業療法を行い、慢性痛症患者のADLを維持することが望まれる