本田哲三 リハビリテーション科の立場から 慢性腰痛の疼痛管理を中心に Pain Clinic 2007;28(11):1466-1472

  • Fordyce 疼痛の体験をめぐる随意行動を、疼痛行動pain behaviorと呼び、慢性疼痛患者の治療の対象となるのは、その疼痛行動であると考えた
  • pain management progamの目標 
    • 痛みからなにもできないという患者の否定的な認知(思い込み)を痛いけどやるべきことはやれるし、生活も楽しめるといった建設的な意見にかえる
    • 痛みを人生の一部として受入れ、痛みとともに生き、そして痛みにもかかわらず充実した人生を楽しむといった、痛みの受容へと向か
  • 治療施行上の留意点
    • 安易に心因性ときめつけない
    • 1)医療従事者がすべての痛みを取り除ける訳ではない
    • 2)痛みが必ずしも身体の重篤な障害を意味しない
    • 3)適切な身体活動はかえって痛みを減少させる
    • 4)痛みがあってもそれなりに生活を充実させていくことが、長期的には痛みの軽減につながる
    • チーム全体でサポートする
  • 患者の特徴 治療開始後も医療者に執拗に疼痛の除去を要求する
  • 特定の疼痛行動のみとりあげない
  • 患者の建設的な行動には支持的に対応する
  • 慢性腰痛における脳内基盤の解明
    • 2000 Grachev 慢性腰痛における前頭葉機能低下を報告
    • 個々の慢性腰痛患者ごとに主な脳障害部位が同定されることにより、集学的アプローチの個別化が可能となる
    • 慢性腰痛における認知(高次脳機能)機能(注意、記憶、遂行機能、行動と感情の障害、などの脳機能)障害が注目されている

光畑裕正、田島圭子、川越いずみ,金井優典 ペインクリニックの立場から pain clinic 2007;28(11):1473-1481

  • 鑑別診断がされているはずの患者でも、治療経過中に転移性骨腫瘍や腹部大動脈瘤による慢性疼痛であることが判明した経験があるので、注意

田村裕一、米延策雄 整形外科の立場から 腰痛に対する手術の価値と限界 pain clinic 2007;28(12):1565-1572

  • 現状の腰痛に対する外科治療は、その効果が不定であるにもかかわらず、欧米を中心とした企業商業主義に支配された技術開発先行の状態にあり、この点から見ると、腰痛に対する新しい治療があたかも有用であるかのごとく研究が進められているのではないであろうか
  • 腰痛治療に携わるものが、まず、取り組むべき課題は、腰痛の病態解明と確定診断を可能にするツールの開発であり、腰痛症患者の治療を考える中で、患者全体をよく診察(観察)し、その腰痛(症状)に手術が必要かを慎重に考えた上で適応を決定することが重要であろう