MRスペクトロスコピーを用いた慢性疼痛患者の評価の試み

福井弥己郎、岩下成人、飯田温美、塚原悦子、武内順子、松野美幸、野坂修一 MRスペクトロスコピーを用いた慢性疼痛患者の評価の試み PAIN RESEARCH 2007;22(1):27-33

  • 1H-MRSで視床、前帯状回前頭前野の各領域のNAA(Nアスパラギン酸)濃度を測定した
  • NAA濃度が各領域で正常であった患者あるいは視床でのみ低下を認めた患者では、神経ブロック療法を中心とした麻酔科ペインクリニック的アプローチで対処可能であった
  • 前頭前野または前帯状回においてNAA濃度の低下を認めた患者ではペインクリニックアプローチのみならず心療内科的アプローチを必要とした
  • 考察
  • 慢性疼痛患者では原因に関わらず、心理社会的バックグラウンドが痛みを修飾していることがしばしば認められる。MRSを用いたpain imagingを用いて、脳レベルでの治療が必要であることを説明したところ、そこで初めて心の苦悩や心理社会的バックグラウンドを話してくれる患者も経験した。
  • MRSを用いた具体的な定量評価を患者に説明することにより、患者も客観的データがあると納得しやすく、いままで敬遠しがちであった心療内科にも積極的に行くようになり、チーム医療への移行が大変進めやすくなった
  • 心療内科の治療後は痛みの強さは自体は変わらなくても、痛みの伴う不快感が軽減し、表情やコミュニケーションのしやすさ、日常生活のQOLが向上する場合が多く、治療後痛みのレベルは同じでも痛みの囚われが少なくなり、心理的に楽になったということは多くの患者で経験した。このような痛みはあってもあまりきにならなくなるという状態になれば、慢性疼痛の治療は成功といえる