核磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた高齢者の慢性腰背部痛における

岩下成人 核磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた高齢者の慢性腰背部痛における痛みと心の脳機能評価 Osteoporosis Japan 2010;18(1):63-65

  • 痛み刺激を受けると、痛みの部位や強度を認識する識別的側面と同時に、痛みに伴なう不快感や不安感が惹起され、この情動的側面が痛みの捉え方に大きく影響する可能性が示唆されている
  • 対象と方法 骨粗鬆症に伴なう圧迫骨折後の変形性脊椎症女性20名 痛み pain scale 不安 HAD MRSで前帯状回(ACC),前頭前野(PFC)のN-アセチルアスパラギン酸濃度を測定
  • 結果 不安を示した患者は両側ACCで有意にNAA濃度が低下 PFCにおいて低下傾向 痛みの程度や罹患期間とは相関なし
  • NAAは神経細胞に高濃度に局在し、正常神経細胞の密度に相関。つまりNAA濃度の低下は正常神経細胞の機能低下を意味する
  • ACCは痛みに伴なう情動的側面や痛みの予知に関与し、PFCは痛みの認知的側面を担う最も重要な疼痛関連領域であると考えられている
  • 本研究の結果、痛みに伴なう不安が強い罹患患者では、痛みの情動的側面をになう神経細胞に機能低下が生じ、病態の成立に関与している可能性が示唆される
  • 今回研究対象としたACCやPFCにおけるNAA濃度が著明に低下している罹患患者では、神経ブロックをはじめとする身体的アプローチが効果を示さず、症状の改善には、抗うつ薬や抗けいれん薬など中枢性に作用する薬物療法心理的アプローチを必要とした。
  • 痛みの情動的側面で神経機能の変調がみられている病態では、中枢性に作用する治療法が重要であり、MRSを用いた局所脳機能測定は、病態の評価および治療方針の策定に重要な役割を果たす可能性があると考えられる。