虚偽性障害、および転換性障害および疼痛性障害CRPS

水野泰行 虚偽性障害、および転換性障害および疼痛性障害CRPS ペインクリニック 2012;33(8):1089-1097

  • 症状の意図的な産出は虚偽性障害または詐病であって、転換性障害や疼痛性障害における症状、たとえば疼痛の場合、患者は本当に痛いのである
  • 虚偽性障害詐病の違いは、症状を作り出すことによる疾病利得の有無である。虚偽性障害では病者を演じること自体が動機
  • 日本と米国では心身医学のあり方が異なる
  • 心身医学はドイツで誕生し米国で発展した。米国では身体疾患であっても精神心理的要因医学的対処を要するほどに関与している場合、精神医学の対象とされる。ところが、ドイツや日本では、心身医学科、心療内科といった心身医学の臨床を専門とする診療科が散財する点で、米国地は医療事情が異なっている。そのため、日本における心身症に該当するものが、米国では精神疾患に含まれているのである
  • DSM 非専門家が画一的にこの基準を用いて精神疾患を診断することは禁止されている
  • DSMは日本のような心療内科が存在しない米国における分類であって、そこにあてはまるから精神疾患であるといった捉え方は、日本では必ずしも妥当でないということである
  • そもそも、患者の症状を精神疾患か身体疾患かといった二分法で分類しようとすること自体に問題があり、精神的要因と身体的要因がそれぞれある程度の割合で関与しているという連続的なスペクトラムの中で、個々の患者の症状をは位置づけられるべきである
  • 加害者との問題が解決する前に、「それとこれとは別」と、良い意味での諦めというか、割り切りができる人は、かなりの理性的な力と自分に対する信頼感をもった人である
  • 疾病利得 一次利得、二次利得
    • 一次疾病利得とは疾病によって心理的葛藤を回避したり精神的充足感を得たりする無意識的な心理プロセスであり、二次疾病利得は現実的な利益で、仕事から逃れられる、保険や補償などによる経済的な利益、病人としていたわられたり責任を免除されたりすることなどがある
  • 二次疾病利得の存在を根拠に転換性障害詐病を疑われる場合があるが、それは誤った判断で、実際には疾病利得が全く無い慢性疼痛の方が稀なのである。疾病利得をえることが目的でなくても、結果として症状を維持される構造に組み込まれていてしまっていることは珍しくない
  • 詐病の場合は二次疾病利得の存在が必ずあり、それを失うことに強い抵抗を示す
  • CRPSの心理社会的因子
    • 納得しないままの手術
      • そういった患者の本心を知ることは難しいが、ルーチンの説明ではあっても、それを聞いている患者の表情や発言、同伴者との関係に気をつけて、自分でよく考えて返事をしているようにみえない患者や、説明を十分吟味せずに短絡的に返事をする患者、本人より同伴者の方が手術に積極的な場合などは注意すべきである
    • 易不安性
      • どのように理解したかを患者の言葉で語ってもらうことを考慮した方がよういかもしれない
    • 医師によって説明が異なる
    • 見捨てられ感
  • 治療関係は、患者と治療者との信頼関係によって成り立つものであり、症状を意図的に作り出されたものと判断することは、その時点で治療者側からの治療関係の放棄を意味するからである
  • 映画を単なる娯楽でなく、痛みを抱えて生きていくために自分で発見した有効な対処法であると位置づけ、そのような対処法ができていることや諦めずに通院を続けていることを患者の努力や才能として肯定的にフィードバックした
  • 心療内科での治療としては、痛みがあっても段階的に活動量を増やしていくこと、痛みに伴う不安は、なくそうとはせずに脇に置きながら付き合っていくこと、痛み以外の感覚刺激や痛みから気が逸れるような行動を増やしていくことなどであり、患者自身がそれは良さそうだと思えるなら治療を開始できると説明した所、患者は関心を示し、治療が進められた