本田哲三、丸田俊彦 慢性疼痛の治療 精神科治療学 2000;15(3):289-296

  • Fordyce WE 疼痛の体験をめぐる随意行動を疼痛行動とよび、慢性疼痛患者での治療の対象となるのは疼痛行動であると考えた。
  • 目標 痛いから何もできないという患者の否定的な認知思い込みを、痛いけどやるべきことはやれるし、生活も楽しめるといった建設的態度に変える
  • 主な心理社会的要因
    • 心理的要因 
      • 性格 自己主張が弱い、依存的、強迫的、他
      • 情緒 抑うつ、不安、怒り、イライラ、他
      • 知的資質 問題解決能力、言語能力、他
      • 意欲、生き甲斐 生活を方向付ける目標の有無
    • 社会的要因 
      • 家族関係 過度に厳格、過保護、無関心、他
      • 職場での適応 仕事が負担、人間関係が苦手、他
      • 経済問題 休職にともなう減収、他
      • 補償 加害者の対応に誠意がない、他
    • 評価
      • 患者の苦悩によく耳を傾けその中から患者の痛みに対する建設的で主体的な態度をとりあげ、それを強化するように努める
      • OT 坐位および立位の耐久性とともに日常生活動作における身のこなし方の評価
      • ゴール設定 具体的
    • 訓練
      • 疼痛行動が他者とのコミュニケーションの手段となっている受動攻撃的な患者には、対話場面における自己主張訓練をおこなう
      • 配偶者や両親兄弟などが本人の疼痛行動を強化することのないように家族指導
      • 現代の医学では慢性疼痛に特効する治療法はなく、改善の有無はまさに自助努力にかかっている点を強調
      • 持久力増強訓練および創造的作業
      • 痛みを人生の一部として受入れ、痛みとともに生き、そして痛みにもかかわらず充実した人生を楽しむ 痛みの受容
    • 施行上の留意点
      • 安易に心因性疼痛ときめつけない 患者にとってすべての痛みは真である
      • 痛み障害的に対応
      • チーム全体でサポート
    • 医療保険制度上の問題点

山㟢洋祐、荒井稔、新井平伊 慢性疼痛の手掌状としたうつ病症例 精神科治療学 2000;15(3):395-397

  • 患者にとって受入れられない喪失体験の否認として身体症状が現れてくると考えることができる
  • 夫の病気の告知に対して適正な受容を行えず、悲哀などの正常な感情表出が困難であり、初老期うつ病の特有な焦燥と困惑を主としたうつ病が発症した
  • 支持精神療法では、夫が病気になったという事実を否認せず、うけいれることを目標とした
  • 一般に執着気質者は、行動することによってのみ、罪悪感や不安感を解消することができる

林剛彦 痛みの勉強会の実践 精神科治療学 2000;15(3):385-390

  • 慢性疼痛 疼痛システムの異常によるか、または疼痛システムが慢性的に駆動されることによる痛みである
  • 患者さんの面子、プライドをつぶさずに、気付きをうながす
  • 痛みとは、組織の実際の、または潜在的な損傷にともなうか、あるいはこのような損傷を受けたときに表すような言葉で表現される、不快な感覚的、情動的体験である
    • 痛みは損傷が起こってる場合がほとんどだが、損傷が発見できなかったり、損傷が治っても痛みだけのこることあり
    • 感覚的のみだけでなく、情動的な側面もある
  • ゲートコントロールセオリー
    • 門を開くものとして、過労、筋の緊張、不安感、抑うつ、心配、痛みへの過剰な関心(とらわれ)、破局(絶望)など、negativeなものが門を開き、痛みを感じ易くする
    • 門を閉じさせるものとして、筋肉をリラックスさせる、鍼、低周波刺激、脳脊髄への電気刺激、薬物、ストレッチなどのトレーニング、幸福感に包まれること、心がリラックスすること、痛み以外のことに注意を向けること、痛みに負けないぞと自分に言い聞かせることなどが、門を閉じて痛みを軽くする
  • 認知を修正することで、痛みはあるがいろいろなことができ、残された人生を有意義にすごせること。
  • 痛みの多層モデル 侵害受容、疼痛、苦悩、疼痛行動
    • 侵害受容、疼痛、苦悩は本人しかわからない。疼痛行動は他人にも分かる。ここを治療対象とする
    • オペラント学習型、回避学習型
    • レスポンデント学習型