町田英世、中井吉英 慢性疼痛の治療 精神科治療学 2000;15(3):281-287

  • 主観的な疼痛という体験は身体的病因のみで語れるはずもなく、心理社会的要因の考慮もなされるようになってきた。慢性疼痛は後者の比重が増している病態といえ、個別な病因で割り切れるものではないために、心理療法という枠だけで疼痛を語ると全体的な病態とはことなってしまう管がある。
  • 近代医学では病因論的視点から、しばしば一病因で疼痛をとらえようとしがちである。
  • どんな疼痛も器質的、機能的、心理的もふくめて様々な要因が複雑に関与し、一要因のみで割り切れる病態でないことを意味している。
  • Loeser & Melzackの多相的モデル
    • pain(疼痛感覚), suffering (苦痛), pain behavior (疼痛行動)
  • 慢性疼痛の治療対象は痛みそのものでなく、疼痛行動にある Fordyce
  • 痛みは正であれ負であれなんからの疼痛行動に表現されるコミュニケーションが生じない限りは存在しないことになり、問題について語ることで治療システムが構成される
  • 慢性疼痛では、患者の身体的な病の経験を受容する過程として、丁寧に身体的診察を行うことが必要である。
  • 認知行動療法では、「痛みのために何もできない」から「痛みがあっても行動できる」といった枠組みの変化を促す
  • 患者の痛みは、家族の絆を強めるのに役立っている
  • 慢性疼痛患者は長い過程から、しばしば治療者に不信を強める一方で医療への依存度が強化され、治療の能動的姿勢が乏しくなっていることも多い。ペインスコア表は、慢性疼痛患者がしばしば持つ「痛みを分かってほしい」といった気持ちを表現できる場となる
  • 患者側の「治療者が治す」思考から、「患者自身がセルフコントロールする」という視点を持たせていくのが大切
  • Gate control theory
    • 痛みが情動によって影響をうける、その影響は脊髄になるゲートによって調節される
    • リラックスしたときや楽しいときには痛みが少ないのは、ゲートが閉じて脳に伝わる痛みの情報がすくなくなるため
  • コントロールの難しいいたみという枠組みが、リラクゼーションによってコントロールできるかもしれないという枠組みに変わっていく可能性があろう