芦沢健、本間真理、池田望 詳細に生育歴を聴くことが顔面痛の軽減のきっかけとなった一例 慢性疼痛 2003;22(1):81-84
- 6年前生まれて初めて沢山話を聞いてもらった。自分自身を見つめ直すきっかけとなったとのことであった
- 患者は父親にも夫にも暴力をふるわれていた。患者にとっての夫の暴力は、その時だけでなく子どもの時からの父親からの暴力を鮮明に想起させる辛い再体験であることが窺える。再体験は繰り返され心身ともに外傷体験が強化されたと考えられる。患者は右手で殴られていたことから、左顔面に疼痛が強いことも解釈できる。
- 医療人類学からKleinmanは慢性の病いを抱えた患者の物語を社会的プロセスとして理解し、この物語こそが医療やケアの中心にすえられるものであるとしている。この患者にとって詳細に生育歴を聴取することは、症状形成のプロセスを物語として受容共感する共同作業となったと理解できるかもしれない
- こうしたスタンスに基づく治療的対話の中から患者の物語の書き換えがおきるとのことである。生育歴を詳細に受容的に聴取したことが回復過程において患者の悲惨な物語から自己肯定的な物語として書き換えがされたと解釈できる。これはナラティブ・セラピーとして理解できるかもしれない