慢性疼痛の電気痙攣療法(ECT)の適応とその効果の特徴

鮫島達夫、土井永史、米良仁志、竹山静夫、諏訪浩、中村満、一瀬邦弘、木納賢、加藤進昌 慢性疼痛の電気痙攣療法(ECT)の適応とその効果の特徴 精神科 2006;9(4):293-300

  • 電気痙攣療法(electroconvulsive therapy:ECT)とは、経頭蓋的電気刺激により、人工的に痙攣発作を誘発し、その後生じる二次的な脳内過程を介して脳機能を改善させる精神科治療法の一つである。うつ病統合失調症などに施行される。現在では、全身麻酔下にECTは施行されその安全性がより高められている。
  • ECT鎮痛効果の特徴
    • われわれが、慢性疼痛の中でその鎮痛効果が確認できものは、中枢性疼痛、帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia:PHN),幻肢痛、CRPSなど神経因性疼痛(求心路遮断性疼痛)である。
    • 鎮痛効果は一定の潜時を経て発言する
    • ECT初期にはECT施行直後に痛みのぶり返しがみられる
    • 鎮痛効果は月単位で持続する
    • 鎮痛効果は耐性を生じにくく、再発例に対する鎮痛効果の再現性があり、維持的ECTの施行の可能性がある
    • 鎮痛効果は抑うつ気分の改善を介するものではない
    • 学習・強化された痛み行動は修正しない
  • ECTの鎮痛機序として視床が重要な役割を演じている可能性
  • 求心路遮断性疼痛の病態には神経の障害部位の高さにかかわらず視床機能の変調が深く関わっていることと、ECTの鎮痛効果が主に視床機能の回復を介するものであることを示すものである。