臨床心理学 2005;5(4)

森岡正芳 特集痛みとそのケア 特集にあたっって 臨床心理学 2005;5(4):439-442

  • 「私」の痛みとしては、身体の痛みとこころの痛みは分けられない。
  • (痛み) 文脈に応じた情動表現の様式があり、それは文化の差も大きい
  • 痛いと感じることの文化歴史的な差異、痛み体験の文脈依存性について医療人類学、心理人類学の分野でずいぶん議論されてきた
  • 臨床心理の場には、感覚としての痛みと情動体験としての痛みを分けての対応が困難なクライエントがおとずれる
  • 解釈の与え方によって痛み体験そのものが変化する可能性がある
  • 日常の体験でも、自分の痛みを語り誰かに親身に聞いてもらうことで、痛みの事実そのものをは変わらないにしても、気分がいくらか楽になり、相手を親しみをもってつながっている自分に気づくことがある。
  • 痛みを痛いと感じるには最初からその痛みをうつしだす他者の存在がかかせない
  • 他者の介添えがあってはじめて、その興奮と緊張を緩め、解除することができる

岸本寛史 痛みとはなにか 臨床心理学 2005;5(4):443-449

  • 心の痛みと体の痛みを明確に分けることは難しい
  • principles of neural science 4th ed 痛みは知覚であるが、実際の組織損傷もしくは起こりうる組織損傷に関連する不快な感覚であると同時に情動的な体験である
  • 感覚としてではなく体験として定義せざろうえないところに痛みの難しさがある。痛みの強さは組織損傷の強さとはかならずしも比例しないのである
  • 痛みを、痛み刺激→痛覚神経の受容体→痛覚伝導路→脳内中枢という単純な経路だけではとても説明しきれない
  • 慢性疼痛の臨床研究および治療に寄与した理論 オペラント条件付け 報酬としての二次的疾病利得という観点から痛みを捉える
  • 斎藤 悪循環という観点
  • Sarno 腰痛患者の多くは解剖学的損傷がないのに痛みを訴えることに疑問を抱き、臨床を重ねる上でTMS(筋緊張症候群)を提唱
    • 古典的条件付け 腰痛が出たときの恐怖 周囲から与えられる情報がこれらの恐怖を後押し
    • 骨が脆くなっている、物を持ち上げてはいけない、ハイヒールを履いてはいけない、走っては行けない等の何気ないアドバイスが、結果的に条件付けを強化していることがしばしばある
  • 末期がんのいたみ
    • 認知指向パターンの変化(病名を知って最後の準備をしようときめたこと)が、下向きの電線を通して痛みの神経回路の交換台に働きかけたとすれば、癌に起因する身体的な痛みが実際に軽減したことも十分に考えられる
  • 痛みを訴える方々との臨床を重ねる中で感じてきたのは、受容的な立場を中心に据える関わりだけでは、事態は膠着したままになりがちで、どこかで対決なり直面するということが必要となってくるのではないか