笠井裕一 痛みの種類とその表現 整災外 2009;52:479-482

  • 痛み感覚体験、情動体験 怒哀楽に代表される個人的な感覚であり、元来他人とは共有できない性質
  • 痛みの時間的分類 急性疼痛、慢性疼痛
  • 病態生理学的な分類 侵害受容性疼痛(内臓痛、関連痛、体性痛)、神経因性疼痛心因性疼痛

竹林康雄、山下敏彦 痛みに関する理学的検査と補助診断法 整災外 2009;52:491-496

  • 電流知覚閾値 CPT current perception threthold
    • Neurometer 装置は、皮膚へ電流刺激を加えることで末梢神経を選択的に検査できる装置である。2000Hzの刺激では振動かくや圧覚を伝達する大径有髄神経線維のAβ 線維を、250Hzでは触覚や鋭い痛覚を伝達する小径有髄線維のAδ線維を、5Hzでは鈍い痛覚を伝達する無髄のC線維を各々刺激する
    • 本装置で各々の末梢神経を選択的に刺激し、被検者が電流刺激を感じ取れる最小電流刺激が電流知覚閾値CPTである。
    • このCPT値を測定することにより、痛覚を伝達する神経線維(主にAδ線維とC無髄線維)の機能を定量的に評価することが可能である。
    • また本装置は二重盲検法で行われるため、電流刺激の状況を検者も被検者も把握できないので、神経機能を客観的に評価できる
    • http://www.neurotron.com/site/index.html

池本竜則、牛田亨宏 痛みの脳内画像診断 整災外 2009;52:497-505

  • 健常人の痛覚認知脳イメージング研究に関するメタ解析 Apkarian
    • 侵害刺激、いわゆる痛刺激をくわえると、脳内では主として視床、島、前帯状回および体性感覚野(S1,S2)、前頭前野等に神経活動が生じることを報告
    • さらにS1,S2の活動頻度に関してはEEG,MEG研究とPET,fMRI研究に有意差はなく、視床、島前帯状回前頭前野に関してはPET,fMRI研究の方でその活動頻度の検出が有意に多かった
  • 痛覚を含めた感覚認知が被検者の経験、体験に基づく主観的な情報認知である
  • 刺激対側のS1領域が侵害情報源の空間的対部位認識の中枢として重要な役割を担っている者と考えられる
  • 帯状回は痛覚系を含め様々な認知情動変化に関与している部位と考えられているが、痛みを訴える患者に前帯状回切除を行うと、痛みの不快感は軽減するものの、痛覚そのものは残ることが報告されており、この領域がすべての痛み感覚の経験に必要条件である可能性は低いと考えられる
  • 島前方領域は、外界の変化や刺激が自己(生体)に与える影響を予測し、予測される状況に対する生体の備えを構築する神経回路として重要な役割を果たしているらしく、恐怖や不安要素がその鎮痙活動を左右すると考えられている。
  • このことからヒトは、自ら不快な侵害刺激を受ける際には、事前にその侵害刺激を有る程度予期し、自己に生じる痛みに対して備えをしているとも考えられる
  • 生体に組織障害が生じていても痛みが認知されにくいことがあり、これは熱中したスポーツの後や、集中した作業のあとに、ふと痛みの存在に気づくことに代表される。
  • この研究結果は、個人の思い込みにより、実際に与えられる侵害刺激の質に影響が起こり得ることを示唆するものと考えられる
  • PAG(中脳水道周囲灰白質)の働きが注意による痛みの程度のコントロールに重要な部位であると報告している
  • 慢性的な痛みが中枢神経系における可塑的変化を引き起こしている可能性を示唆
  • 慢性疼痛病態もある種のストレス状態であることを考えると、脳内では二次的、三次的な神経の可塑的変化をきたす可能性があることを示唆