池本竜則、牛田亨宏 痛みの脳内画像診断 整災外 2009;52:497-505

  • 健常人の痛覚認知脳イメージング研究に関するメタ解析 Apkarian
    • 侵害刺激、いわゆる痛刺激をくわえると、脳内では主として視床、島、前帯状回および体性感覚野(S1,S2)、前頭前野等に神経活動が生じることを報告
    • さらにS1,S2の活動頻度に関してはEEG,MEG研究とPET,fMRI研究に有意差はなく、視床、島前帯状回前頭前野に関してはPET,fMRI研究の方でその活動頻度の検出が有意に多かった
  • 痛覚を含めた感覚認知が被検者の経験、体験に基づく主観的な情報認知である
  • 刺激対側のS1領域が侵害情報源の空間的対部位認識の中枢として重要な役割を担っている者と考えられる
  • 帯状回は痛覚系を含め様々な認知情動変化に関与している部位と考えられているが、痛みを訴える患者に前帯状回切除を行うと、痛みの不快感は軽減するものの、痛覚そのものは残ることが報告されており、この領域がすべての痛み感覚の経験に必要条件である可能性は低いと考えられる
  • 島前方領域は、外界の変化や刺激が自己(生体)に与える影響を予測し、予測される状況に対する生体の備えを構築する神経回路として重要な役割を果たしているらしく、恐怖や不安要素がその鎮痙活動を左右すると考えられている。
  • このことからヒトは、自ら不快な侵害刺激を受ける際には、事前にその侵害刺激を有る程度予期し、自己に生じる痛みに対して備えをしているとも考えられる
  • 生体に組織障害が生じていても痛みが認知されにくいことがあり、これは熱中したスポーツの後や、集中した作業のあとに、ふと痛みの存在に気づくことに代表される。
  • この研究結果は、個人の思い込みにより、実際に与えられる侵害刺激の質に影響が起こり得ることを示唆するものと考えられる
  • PAG(中脳水道周囲灰白質)の働きが注意による痛みの程度のコントロールに重要な部位であると報告している
  • 慢性的な痛みが中枢神経系における可塑的変化を引き起こしている可能性を示唆
  • 慢性疼痛病態もある種のストレス状態であることを考えると、脳内では二次的、三次的な神経の可塑的変化をきたす可能性があることを示唆