松平浩 非特異的腰痛の新たな視点にたった解釈案 ペインクリニック 2013;34(1):15-24

  • 腰痛の慢性・難治化に強く影響する危険因子の多くが心理社会的要因であることが明らかになり、病院の正確な把握は難しいものの、腰痛は「生物・心理・社会的疼痛症候群」であるという認識に転換した。
  • 著者の行なった前向き疫学研究
    • 過去一年間腰痛がなかった日本人勤労者が、その後2年の間に仕事に支障をきたした非特異的腰痛が新たに発生した危険因子として、「過去の腰痛歴」、「持ち上げ動作が頻繁」という他の重要かつ理解しやすい因子を調整しても、「職場の人間関係のストレスが強いこと」が有意であった。
  • 恐怖回避思考
    • 自分の腰および腰痛に対するネガティブなイメージや、痛み自体のみならず痛みを誘発すると考えてしまう行動を取ることへの不安・恐怖感から過度の腰を大事にしてしまう思考・行動のことを指す
  • 同時に複数の身体症状が顕著化していることは、脳のdysfunctionであることを疑う情報として受け止める必要がある
  • 運動器dysfunction
    • 一般的には患者は避け、医療者は積極的に動かすことを助言しないであろう痛みを伴うstiffness(可動制限)がある方向に、ストレッチ様の十分な運動不可を加えることが、運動器dysfunctionを早期に改善させるコツである
  • 従来の分類では、心因性(非器質性)疼痛を脳dysfuctionと概ね置き換えてイメージしている。患者にとって”心因性”という用語はネガティブなイメージであり、脳内のdopamine, serotoninといった内因性の神経伝達物質の分泌異常(機能の不具合)と説明したほうが受け入れもよいと考えている