慢性疼痛の臨床に必要な心理社会的評価尺度 MPI

笠原諭、松平浩、荒瀬洋子、村上安壽子、高橋直人、矢吹省司 慢性疼痛の臨床に必要な心理社会的評価尺度 MPI 最新精神医学 2017;22(2):103-108

  • MMPI 556問の質問から成り、また精神病傾向を問う質問も含まれており、設問数と設問内容が患者と治療者の関係を危険にさらす可能性が指摘されている
  • 認知行動療法を慢性疼痛患者に適用する際に、直接的なターゲットとなるのは、痛みの性状そのものでなく、そうした症状に影響を及ぼしている行動、認知、感情、環境などの媒介要因であり、こうした変数に変化を生じさせる方法を導入し、間接的に痛みの性状を改善させることが目的になる
  • そのため認知行動療法の効果を高める際には、どのような媒介要因をターゲットにするか明確にし、ターゲットに適合する治療技法を選択することが重要となる
  • 慢性腰痛の認知行動療法における媒介要因 レビュー
    • 生活障害の改善を導く変数 恐怖ー回避に関する信念、破局的思考、痛みに対するコントロール感を含む認知的要因
    • 恐怖回避に介する信念に対してはback bookのような患者教育用のパンフレット、段階的エクスポージャー
  • 慢性腰痛に対して認知行動療法の含む学際的治療を行なった場合の調整要因 レビュー
    • MPI(multidimentional pain inventory)を用いた3分類
    • Dysfunctional, Interpersonally distressedに分類される患者では学際的な治療による効果が期待できる
    • Adaptive coperは痛みや情緒的な苦痛が低く、高い生活管理能力を有しているため適切なアドバイスのみでも行動変容を起こしやすい
    • Dysfunctional 概して家族など重要他者が患者の痛み行動に対して気遣いや義務の肩代わりなど過保護の反応を示すことが多く、これを減じる介入(オペラント行動療法)が必要
    • Interpersonally distressed 重要他者から責められるような生活状況にあり、痛みで自分を罰することで批判を免れようとする傾向があるため、自己主張訓練のような対人技能の獲得が必要となる
  • このように調整要因に応じたグループ分けと、媒介要因に焦点を絞った介入を行うことで、慢性疼痛に対して、より効果的な認知行動療法が実践できると考えられる
  • MPI multidimentional pain inventory
    • 自記式の全61項目 3つのセクちょん
    • セクション1 28項目 痛みの影響を評価 下位尺度 痛みの強度、痛みによる障害、生活の制御、感情的な苦痛、社会的な支援
    • セクション2 14項目 重要他者からの痛みに対する反応を評価 下位尺度 否定的反応、気遣いする反応、気を逸らさせる反応
    • セクション3 19項目 患者の活動を評価 下位尺度 家事、屋外の仕事、家庭外の活動、社会的活動
    • MPIの特に優れている点は、重要他者である家族がよかれと思っている支援が、図らずも患者の痛み行動を強化してしまっているかどうかを、セクション2で評価できることが挙げられる。これにより、家族に対して痛み行動への強化因子を減じる必要性を、根拠をもって説明することができる
    • DYS type
      • 重要他者が擁護、医療者から受動的な治療など多くのオペラント強化因子(疾病利得)あり 心理社会的要因を認めたがらない。
      • 痛み行動への強化因子を減じ、痛みへの恐怖を理由にして回避している健康運動に対して報酬設定するオペラント行動療法が有効
    • ID type
      • 家族などの重要な他者から日常的に責められていることがおおく、生活の中で非常に多くのストレスを抱えているにもかかわらず、支援が乏しい
      • 自己主張訓練などの対人関係技能を含む認知行動療法が有効
    • AC type
      • 訴える痛みの程度はそれほど高くなく、情動的な苦痛や痛み行動の程度も低く、高い生活管理能力を有している
      • 集学的学際的な治療までは必要とせず、対処スキルに関する教育やアドバイスをしっかり行うだけでも十分対応可能な場合が少なくない

<<