慢性疼痛難治例に対する段階的心身医学的治療

細井昌子 慢性疼痛難治例に対する段階的心身医学的治療 心身医 2018;58:404-410

  • 難治化例 自身の過去の不快情動と向き合うことが極端に苦手な失感情症(アレキシサイミア)傾向が強い
  • 寡黙であったり、多弁であっても本当につらい部分は語らず、本質的ではない部分を多弁に語ったりしていることが多い
  • 難治例 過去の不快情動に対する抑圧の強さが悪影響
  • 難治例では治療の初期では本当に重要な部分は「語らない」あるいは「語れない」ものであることを理解しておくことは重要である。
  • つまり、患者が「何を語るか?」とともに、「何を語れないか?」に注目することで病態が明確になることがある
  • 心身症患者においては、不快感を覚えた時にその場で怒りを表出できない症例が多く、自己主張ができない状態で理不尽な役割を次々と引き受けることが多い
  • 長年の繰り返しストレスに対して、抑圧してきた不快情動を自然に感じられるようになるには、かなりのステップが必要である
  • 慢性疼痛難治例の心身医学敵病態を評価する際に、「理不尽な環境における長期にわたる怒りの表出不全」が基礎にあることに留意することが有用である
  • 幼少期からのライフレビューで、上手に発散できていない未処理の不快感情があるかどうかを検討し、面接の場でできる限り発散を試みる
  • 抑圧の強い患者では、まったく覚えていない人生の時期があることも珍しくはない
  • 最も悪いとする養育スタイル 低ケア・過干渉
  • こういった養育スタイルでは、家庭でほっとする環境が得られず、常に交感神経が過緊張の状態が持続し、生物学的にも頭痛・腹痛・膝の痛み・顎のいたみなど持続しやすいと考えられる
  • 人生の構えとして、「低ケア」で自分を支えてもらえないことから、自己否定型の認知が生まれやすく、常に自分の考えを否定される「高過干渉」により、自分の考えに自信をもてず、他者からの防衛を常に意識して他者の言葉に反抗する人生の構えである他者否定型の認知が常態化していることもある
  • 養育環境でほっとする場が与えられず、自身の努力だけを頼りに頑張ってきた患者は無意識に、「歯を食いしばる」癖がついていることも多い
  • 意識的な考え方の「自分ルール(決めごと)」とともに、無意識的に不快情動がわきおこり、それを回避するために何らかの過活動を行っていることが理解される
  • 患者は不快な生活環境に暴露されてきた生育歴があり、不快感に対する感樹脂江が高く、不快情動に対する耐性の低さからから回避行動に向かう脳内の神経回路が自動的に組み込まれてしまっているからである
  • ライフレビューを行って自身のこれまでの人生を客観視することができるようになって、初めて養育環境や社会から「刷り込まれていた生き方」から自由になり、「自分の望む人生」を真剣に悩むことは、心理療法としても核心的な重要なステップである
  • ACTが力を発揮するのは、この「人生の価値」を意識した生活の中、行動の変容に踏み出す勇気を「充電するために」治療者が患者とともに話し合うことができるようになるからともいえよう。これまで、回避行動に逃げ込む行動を続けながら、本質に向き合っていない罪悪感を内在化していた患者に、新たな行動に踏み込む具体的な方策を提案し、行動を起こすことを時間をかけて援助できる