二階堂琢也、紺野愼一 転換メカニズムより難治化した運動器疼痛:整形外科臨床における心身医療の実際 ペインクリニック 2014;35(5):659-671
- 整形外科医は身体所見や画像検査を重要視する傾向が強い。しかし、身体所見や画像所見だけでは、合理的な説明ができない慢性痛が多く存在する。患者の痛みがいかに非合理的であるかを患者に説明して、医師が治療を放棄しても問題の解決にはならない。患者が何らかのメカニズムで痛みや苦痛を感じていることは事実であり、治療者はそのことを十分に理解し、共感を示して患者を受け入れる必要がある。そして、生物学的損傷を検出する手法だけでは痛みのスクリーニングは十分でないことを認識することが重要である。すなわち、慢性痛の患者では、生物学的(形態的)な以上を分析するのはもちろんのこと、心理社会的因子の関与を可能な限り客観的に分析し、痛みの原因や背景を追求する姿勢が求められる
- これからの整形外科医は、痛みの診療に携わる医師として、器質的な異常ばかりでなく、心理社会的因子も考慮していかなければならない、精神科医に任せるのでなく、自分達が主体となってこれらの問題に取り組んでいくことがこれからの整形外科医の姿なのかもしれない
- コメント 細井昌子
- リエゾン療法による心身医療を行うと、今まで「治らない」と思っていた症例が興味深い変化を見せ、多くの人間ドラマが繰り広げられたのではないでしょうか?信頼関係を大切にしてお付き合いしをしていると、患者さんが心を閉ざしていた時には全く語っていただけなかったいろいろな胸の内を語られるようになり、了解可能な「人間としての苦痛(social pain)」が語られることで、慢性痛の意味を多義的に理解されるようになる経験を多数されてきたのではないかと思われました