CRPSの診断と病態、治療

柴田政彦、住谷昌彦、真下節 CRPSの診断と病態、治療 麻酔科学レクチャー  2010;2(4):757-762

  • 外傷後に痛みの遷延する場合、末梢神経の損傷の有無を判定することが困難な場合は少なくない
  • 関節拘縮とは器質的な変化によって可動域が制限されることをいい、麻酔下でも動きが得られないものを指すのに対し、可動域制限とは器質的な変化はなくても痛みなどが原因で起こりうる症状を指す
  • CRPSは複数の因子が合わさって生じる慢性の痛みの病態であり、感覚神経、自律神経、運動神経、骨、関節、筋、脊髄、脳、社会的因子などが関与する
  • CRPSと診断される症例に共通して言えることは、「普通でないなにか」があるということです。
  • なぜ神経損傷後に痛みの出る例と出ない例とがあるのかは解明されていません。
  • 末梢神経損傷後痛以外でCRPSと診断されるのは原因不明の痛み
    • 詐病や作為病など意図的に症状を作り出している場合
    • 非常にまじめな性格の方で、痛みにとらわれ運動機能にも障害が及ぶ方がまれにいる
    • 身体表現性障害
  • 1994年のIASP基準ではCRPS type IとtypeIIに分けられていたが、新しい分類では分けられていません。1999年に発表された研究でtypeIとtypeIIとの間に症状や徴候に差が見つけられなかったことによる。
  • 神経損傷があると考えられる場合には、神経障害性疼痛ガイドラインに則ってプレガバリンや三環系抗うつ薬などを第一選択とし、場合によってはオピオイドの使用も考慮
  • 神経障害がないと考える場合には、心理社会的要因や不動化の要因を念頭におき、痛みの軽減を対象とするよりむしろ機能改善や社会復帰を直接目標とする理学療法を中心とした対応が望ましいと思われる
  • 不信感や不満、怒りなどの感情が強い場合には、まずこれらの問題の解決を優先しなければ治療効果は期待できません。
  • ある治療法で効果がない場合に、漫然と繰り返さないことが重要