丸田俊彦 慢性疼痛患者へのアプローチ:"pain behavior"をめぐって 日本運動器疼痛学会誌 2013;5(1):3-6

  • 強いて言えば、「いかにあがこうとも、器質性と心因性の区別は出来ない」というのが答えである
  • 普段は結構聞く耳を持つ人でも、いったん白衣を着ると、何か「客観性」をまとった様な錯覚に陥り、自分の見方・意見が正しい様な錯覚に陥り易い。また、患者は、逆の視点から、たとえ自分が正しい、一言言いたいと思っても、それを控えてしまう事も少なくない
  • 慢性疼痛をめぐり、筆者が確信をもっていえることが2つある。一つは、心と体は、われわれが考える以上に近く、切り離せないものであるということ。言葉を換えて言えば、「心因性 vs 器質性」という区別は、少なくも慢性疼痛の臨床では意味を持たない。第2は、患者の訴えが、慢性疼痛も含めて、患者の病理だけに起因するものではない事である。(認知・)行動療法が指摘する通り、「随意行動は周囲からの反応や、思考内容・感情により規定される」し、「痛みという知覚を主観的にどう体験し、その体験をどう表現するかは、周囲の人的環境との相互作用によって決まる」からである。