はじめに

  • 主な目的 (2015/12/31記)
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  • 興味ある分野
    • 慢性疼痛
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痛みと共感

納富貴、納富壽、入江慎一郎、田中正利、オズジャン日香里、松浦賢長、荒堀憲二、宮原忍 痛みと共感 思春期学 2009;27(1):45-52

  • 社会生活を重んじるヒトでは、孤立すると心に鈍い痛みを感じる-この心の痛みもまた、前帯状回で感知される。
  • 心の痛みを伴う疎外感を回避する行動選択の根拠が倫理観となったことも適応的である
  • 他者の心を読み取り、同調することを共感という
  • 痛みの共感は近親者に限定される反応ではなく、共感する側が、他人の痛みを自分に置き換えることができてはじめて、疼痛を自覚する領域である体性感覚野までも反応することが証明された
  • 本稿では共感を「身体感覚(痛覚)の経験を礎に感覚・情動・認知が相互に仮想体験された状態」と定義する
  • 扁桃体は情動を記憶する。社会的生活を送る生物では利己的個体は排除されるが、その前に制裁をもって教育される。利用される感情のひとつは恐怖感である
  • 仮想化が身体運動と独立をする(自他分離能力が完成する)5歳から7歳のころに、自分の母親が苦しむ場面に遭遇しても動揺を示さない児童は、のちに反社会的行動をとる可能性が高い-つまり、臨界期までに発達していない痛みに対する危惧感の喪失ー扁桃体機能異常ーは、その後も発達しない。これらは、脳内共感ネットワークの行動に関する重要な一部を扁桃体が担っているという裏付けである
  • 逆に正常人では、強烈は情動記憶は幼少時に形成されることが多く、いったん成立すると修正がむずかしい。
  • cyber ball game 強く疎外感を感じた被験者はよりつよく前帯状回(二次痛、慢性疼痛を自覚する領域)に反応が認められた
  • ミラーニューロン 一部は運動性言語野であるブローカー野に認められた-5-7歳までには、身体運動と独立した仮想化が完成する
  • 模倣には、同期現象、同調作用、随伴現象、応答という概念が混在する-共感を強化する働きに同調作用がある-ラポール(親密な信頼関係)が確立されている人間関係でも、動作の同調性が確認されている
  • Rosenthalは、お互いに対する心の傾注、肯定的な感情の共有、そして非言語的同調性をもって、ラポールが成立すると述べている-共感能力は女性のほうが高い
  • その理由
    • コミュニケーション能力の差、テストステロン仮説、エストロゲン仮説、オキシトシン仮説、脳梁膨大部、前交連の解剖学的大きさの差仮説、セロトニン神経系による自我制御仮説、自我確立仮説--共通する肉体的痛みの体験(月経、初交、妊娠、出産、母乳吸引など)が男性に存在しないことを、男性が共感能力において女性に劣る理由として挙げる
    • 男性は、共通する痛みの体験がなく、それぞれが体験した痛みが海馬や扁桃体に蓄積されているため、痛みの記憶の個人差が大きい。よって、女性に比べて少なくとも痛みに関する共感が生じにくい
  • 痛みの共感は、痛みに関する共感だけを意味するのではなく、共感能力全般を左右する。それは、ヒトとなって急速に進化してきた能力であり、成長の初期段階で形成されなければならないという点も改めて強調しておく
  • 負の共感といえる煽動もヒト独特の行動様式である

痛みの共感と向社会的行動

山田真希子 痛みの共感と向社会的行動 生体の科学 2012;69(1):59-62

  • 痛み(身体的、精神的)の共感
    • 認知的共感 cognitive empathy 他人の心を推測し理解する”心の理論"
    • 情動的共感 emotional empathy 他人の情動的共有を指す
      • 背側前部帯状回、前部島皮質(自己の痛みに伴い情動的痛みの脳活動領域)
  • 他人の痛みを観察/想像すると、観察者の脳内ではあたかも自分が痛みを体験しているような共感脳反応がおこる
  • 共感脳反応は誠実な人物に対してのみ生じ、不誠実な人物が痛みを与えられても共感脳反応は生じない
  • 相手の情動反応に対して真逆の反応が生じることを反共感counter-empathyという
  • 痛み共感は、観察者に接近と回避を促す両価的な葛藤現象である。相手の一緒の情動を感じる”共感”が、相手のための情動”同情・哀れみ”にいかに変換されるかが向社会行動の鍵となる
  • 寄付を決定する際、内側前頭前野皮質の活動が高まり、そして、前部島皮質と側頭ー頭頂葉接合部と機能的に連結していることが見出された
  • これは、前部島皮質(情動的痛み)と側頭ー頭頂葉接合部(心の理論)が連動することで内側前頭前皮質の意思決定(救済)が可能となることを示している
  • 他者に痛みが与えられる場面を観察する際、前部島皮質の活動が高まる人ほど、他者の痛みを軽減させるための自己犠牲(自分が痛み刺激を受ける)という利他的行為を行うことが見出された
  • Mastenらは、仲間はずれによる他者の社会的痛みに対する共感脳反応を計測し、共感は、内側前頭前皮質の活動を介して、利他的行動につながることを示した
  • 観察者側に生じる反応は、救済行動につながる”接近反応”よりも自己防衛のための”回避反応”が優勢である可能性が想定できる
  • 共感による苦痛の慢性化は、他人の痛みに触れる職業で出現しやすい燃え尽き症候群burnoutなど、心の健康に害を及ぼすことが知られている
  • このように、注意を痛み共感に伴う自己の不快情動(苦痛)から他者への感情(同情)に意識的に向けることが、共感的苦痛を解消し、利他的行動を生み出す一助になる可能性が期待できる
  • 過去10年以上におよぶ共感の認知神経科学研究により、自己の痛みに伴う脳賦活領域と他者の痛みに対する賦活脳領域が、背側前部帯状回と前部島皮質で重複していることが数多く報告され、共感は、痛みの共有体験shared experienceを基盤に成立すると解釈されてきた
  • 痛み共感は、痛みとは別の情動を反映し、共有体験は必要とせず認知的共感により共感は成立する可能性を示唆している

慢性疼痛治療ガイドライン

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  • 作者: 「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」研究班
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  • メディア: 単行本
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外来後発医薬品使用体制加算

  • 外来後発医薬品使用体制加算 平成30年4月改定
  • 書類は各地区の厚生局
  • 関東信越厚生局特掲診療料の届出一覧の2-123の2種類(別添2,様式38の3, PDFとword形式)
  • さらにここによると、添付書類(検討委員会の概要)が必要。ひな形あり(感謝)。
    • 追記 この添付書類については、様式38の3の2ページ目の注意1に記載あり。
  • あとは各県の事務所へ提出

慢性疼痛と養育環境 難治化の背景

細井昌子、小幡哲嗣、川田浩、富岡光直、有村達之、久保千春、須藤信之 慢性疼痛と養育環境 難治化の背景 ストレス科学 2011;25(4):289-296

  • 社会的疎外感、死別、不公平な待遇、嫉妬、罪悪感などで活性化される脳の領域が痛みの情動成分に関与する部分と共通することも分かってきている
  • 実際に侵害刺激が加わらない状態でも、人が感じる心の痛み体験がソーシャルペインという概念で提唱されている
  • これらの知見をまとめると家族内及び夫婦間の交流不全の頻度が最も多い。家族や夫婦の関係は慢性疼痛に関与する有用な情報であることが明らかとなった
  • これらの心理社会的背景を考える際に最も重要であるのは、人生の早期の養育環境そのものは患者自身の努力では選べないことから、受動的に体験させられた否定的体験であり、基本的には被害者としての苦悩が根底にあるということである
  • 女性患者の中には親、特に母親の愚痴を、一方的に聞かされてきたため、愚痴を言う、あるいは弱音を吐くことに対して嫌悪感があり、前向きを極端に思考している場合がある
  • つまり慢性疼痛の治療において過去の養育環境が過去のみなく、現在にも大きく影響し、不信に伴う交流不全として治療の阻害要因となっているという現実がある
  • 自分という存在が自分の内面に送る自然な感情や思考に対して、各親がどれだけ敬意持って耳を傾けて受け止めてくれたかという言語的・非言語的な認証が、その後の生涯を通じて持続する自尊感情や自己肯定感を生み出すことに重要となる
  • 養育の過程で失感情症を予防することが慢性疼痛の難治化を引き起こさないために役立つ可能性がある
  • つまり自分の内面に沸き起こる漠然とした否定的あるいは肯定的感情を今ここの体験として自分以外の人間を前に言葉に出して味わい他者に自分の内的苦悩を受容してもらう体験を人生早期に得られたかどうかが、現在自身の感情をモニターして自分の行動を決定することが可能となり、過去や未来に過度ににとらわれことなく現在を生きることができるようになるかどうかに大きく関与しているようである
  • そういった症例ではじっと静止して安静を得ると、内面に大きな否定的感情・認知がわき起こり、その体験に耐えられないという絶望的体験をしていたということが、心身医学的治療の中で明らかになることを多く経験する
  • 週に1、2回の指示的重点的面接で、今まで表出できなかった患者の内面の苦悩を話し合い、治療前に言葉に出して話すことで自分が楽になっていくという体験を積み重ねていく中で、実存的な苦しみを治療対象にするという心理療法が導入可能となるのである
  • 人生最初で最大の不公平な待遇差別となる慢性疼痛の背景にある同胞葛藤に焦点を当てる
  • 心身症の治療において重要となる同胞葛藤は、父親あるいは母親のうち、家庭内で大きな影響力をもっている親からどう評価されてきたかがより重要なポイントとなっているようである
  • 慢性疼痛女性患者の母親たちは息子たち(患者の同胞)に愛を注ぎ、娘(慢性疼痛患者)に愚痴を言い、母親への検診を要求したものの、患者の母親と兄や弟の嫁との葛藤関係(嫁姑葛藤)の問題が起こり、結果的には関係が決裂し、同胞葛藤に悩み 兄や弟に嫉妬し続けた患者へ助けを求めてくる場合が多い。
  • 幼少期に愛を得られず、父親に対する愚痴を聞かされてきた患者は、さらに母親の兄や弟、およびその嫁に対する愚痴を聞かされ続け、自分の人生を犠牲にするような行動を取り続け、幸福感を得られないまま日常生活を送っていることがある
  • 周囲の家族に対する献身的な行動に伴い心身の疲弊のなかで発症した身体的痛みに、人生で最初で最大の不平等である同胞葛藤がsocial painとして合併し、慢性疼痛患者の体験する苦悩が深まっているようである
  • 養育慰安強にかかわる慢性疼痛の難治化の背景 両親や同胞への心理的葛藤や家族内交流不全、失感情症、虐待歴や心的・性的トラウマといった大きな3つの因子がある

(いつもながら示唆に富む論文である)

慢性痛患者の評価

柴田政彦、井上隆也、住谷昌彦、村松陽子、真下節 慢性痛患者の評価 麻酔 2008;57:1337-1342

  • すなわち、”痛み”を診るだけではなく、もっと重要なことは痛みを訴える”人”を診られるようにならなければならない
  • 患者の痛みの変化とその理由付けとの医学的な因果関係はないと思われる場合も多く、途中で否定的なコメントをはさみたくなるなるのであるが、初診時には患者が判断している因果関係を否定することも肯定することもなく黙って聴き、患者本人の病気や痛みに対する考え方やとらえ方をしることに役立てる。
  • 機能評価は痛みそのものの評価よりは客観性が高いものの、客観性の乏しい痛みを含んだ評価であることを忘れてはならない
  • 慢性痛の治療において、痛みが軽減すれば機能は改善するであろうという前提で痛みの軽減だけを目標に治療することは、治療の可能性を狭めてしまう危険があり注意が必要である
  • 非がん性慢性痛患者の治療の方針は、痛みの消失ではなく、痛みを有して生活している患者の生活の質の改善に置くことを原則とすべきである
  • 心理的評価の中で”うつ”の評価は最も重要である。うつ病は知らずに放置すると自殺により命を失う危険があり、適切に治療すれば治癒可能な病態であるからである。うつの診断でもっとも重要なのは問診である。抑うつ気分、意欲の低下、希死念慮の有無、不眠や食欲の変化などについて問診する。それらの症状が、以前と比べてどうであるかが重要である