はじめに

  • 主な目的 (2015/12/31記)
    • 読んだ文献等の記録を残す
  • 興味ある分野
    • 慢性疼痛
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身体表現性障害患者への対応

佐藤寿一 身体表現性障害患者への対応 現代医学 2015;63(2):147-148

  • 身体表現性障害への対応のポイント
  • 1 共感的態度を示す 2 身体的に異常がないことを保証する 3 症状が表れる機序(病態)を説明する 4 症状を付き合う覚悟が必要であることを説明する 5 外来診療の目的を患者と共有することである
  • 主たる病気が感染症から生活習慣病へと移り、病気に対しては、“治す”より”付き合う”といったアプローチが必要とされる場合が増えてきた
  • それにともない、医師の役割も、”病気を治してくれる者”から、“病気と付き合うことをサポートしてくれる者”へと変わり、医師のコミュニケーション能力や患者ー医師間の信頼関係がより重要視されるようになってきた
  • 今後の診療方針に関しては、これ以上検査を行っても原因は見つからず、心的および経済的負担が増すだけであること、症状を根本的に取り除く治療法はないため、しばらくは今の症状と付き合う覚悟が必要であることを説明する。次に、もし症状がなくなれば、何をやりたいのか、何をやらなければならないのかを患者に尋ねる。そして、症状を抱えた状態でも、それらのことを少しでも実行し、どれだけ実行できたかに関心を向けることが大切で、それにより症状に囚われることから徐々に開放され症状が軽減していく可能性があることを説明する

幼少期ストレスが成熟期における慢性疼痛に及ぼす影響

#1 西中崇、中本賀寿夫、徳山尚吾 慢性疼痛に対する幼少期ストレスによる脳神経機能異常への影響 日薬理誌 2017;149:79-83
#2 西中崇、中本賀寿夫、徳山尚吾 幼少期ストレスが成熟期における慢性疼痛に及ぼす影響 日薬理誌 2017;149:134-138

  • #2
  • マウス後肢における機械的・熱的刺激に対する痛み感受性にMSSI負荷の影響は認められなかった
    • MSSI; maternal separation and social isolation 母子分離と社会隔離
  • 幼少期のストレス負荷は成熟期における神経障害性疼痛を増強させることが示唆される
  • ストレス負荷は痛みによる情動機能異常の進行を早める働きがあることが示唆される
  • 神経障害性疼痛後の情動障害に対しては雌性マウスにおいてのみ変化が認められた
  • BDNFによる情動機能の調節が注目されている
  • 母子分離後の幼少期におけるBDNF発現変動が成熟期における情動機能の障害や神経障害性疼痛の増悪に影響している可能性が考えられる
  • 幼少期ストレス負荷によるBDNF発現量の変動は、成熟期における神経障害性疼痛後の情動障害発現に関与していることが示唆される
  • 雌性マウスの海馬における母子分離後のBDNF発現量の増加は、神経障害性疼痛後の情動障害の影響を減弱させるために作用していることが示唆される
  • 幼少期ストレスによるBDNF発現変動の性差は、成熟期におけるストレス脆弱性の性差に関与しいるかもしれない
  • 神経障害性疼痛後の情動障害における性差は幼少期ストレス負荷直後の脳内BDNFの発現変動がが関与していることが示唆される

痛みのカウンセリング

田代雅文、細井昌子 痛みのカウンセリング:受容を目指した治療的対話の創造 Practice of pain management 2013;4(3):164-171

  • 現在の症状のみを「その症状をもつ人間が生活している背景」から切り取って、医学生物学的モデルだけで解釈しようとすると、理解不能な症状を呈する「わけのわからない患者さん」にみえることが多いと感じる
  • 生活史や心理社会的背景を尋ねることで、症状を訴える文脈がわかると、理解可能になることがある
  • 「この患者さんは、どの場所に生まれ(風土・文化的背景)、どんな家庭に育って(親子葛藤・兄弟葛藤・教育歴・人生脚本)、どういう仕事・生活をしていて(人間関係・経済的背景・現在の家庭環境)、今回の症状は彼(彼女)にとて、どんな(実存的な)意味合いをもつのであろうか?」と
  • これらがわかってくると、”本当の主訴”を語り合えるようになり、そして、本当の主訴を取り扱うことで心身とも快方に向かう治り方がある
  • 心理面接の技法の分類(有村達之)
    • 第一水準:医療面接
    • 第二水準:カウンセリング
      • (広義の)支持的心理療法 ロジャーズ派の面接
      • 受容共感、感情を表現させる
    • 第三水準:(狭義の)支持的心理療法
      • 感情を表現させすぎない
    • 第四水準:専門的心理療法

慢性疼痛医療における「支える医療としてのマインドフルネスプラクティス」のすすめ

田代雅文、有村達之、細井昌子 慢性疼痛医療における「支える医療としてのマインドフルネスプラクティス」のすすめ:忙しい日常診療に悩むすべての医療スタッフに有用な心理学的方法 日本運動器疼痛学会誌 2015;7:190-195

  • 「強くて何度も知っている(と思っている)医師」と「病気で弱って今起こっている事態をあまり知らない(とされる)患者」との間には父権的な関係性が成立している
  • 真に苦しいときには”施されること”で救われる部分があるが、その時期を過ぎると依存的な関係にとどまることが難点である。それゆえ筆者らは幸せの追求には自律性が必要であると考える。なんでも代わりにやってしまうと自律を損なうので、それを”支える”という視点が大切である
  • 心身医学関連の講座ないしは診療科が開設されているのは九州大学東京大学東邦大学東北大学関西医科大学鹿児島大学東京医科歯科大学(歯学部)、日本大学近畿大学(開設順)の9つしかない
  • マインドフルネスに医療を実践している治療者は、自らの心身の状態に気付きを持って治療にあたり、患者や治療スタッフに接する姿勢が支持的・受容的になる余裕をもつことが可能となってくる
  • マインドフルネスとは「今この瞬間において、価値判断することなくありのままに受容し、それに気づいている状態」である
  • 第2世代までの認知行動療法は、「あやまった認知」を同定して、認知の修正を図ることによって行動変容をもたらしていた
  • 第3世代の認知行動療法においては、自身の認知に注意を向けて気付き(マインドフルの状態)、価値判断をせずにありのままに自身の状態を受け入れることによって、かえって変容がもたらされる点が異なっている
  • 「あなたのために出来ることは何もない」と行っていた治療者が、「私はあなたのために今ここにいますよ」というように変化したことで、患者が癒やされ治っていくことがある

慢性疼痛の心身医学的診察

田代雅文、山田信一、山本洋介、伊達久、細井昌子 慢性疼痛の心身医学的診察:治療的対話の工夫 慢性疼痛 2013;32(1):79-87

  • 痛みは「感覚+不快情動」体験なので、深い情動へのアプローチとして治療的対話が重要となる
  • 「だからそれはその、起こした原因だけじゃなくて、長引いていく物は何かってかんがえてもいいかもね」
  • 面接の当初に、患者はうっと「痛い、痛い」と痛みを訴え続けていた。しかしながら治療者が「あなたには痛みがある」と保証することで、そこを認めてしまっているので、患者は痛みを訴える必要がなくなってしまう
  • IQの低い人の多くは、社会的サポートも上手に受けておらず、大変困っておられる。それで、「大変だったね、よしよし」と苦労を共感することで、納得されて、それだけでいいという感じの方もおられますね
  • 頭のいい人は理論志向で、そうでもない人は感情志向という感じで、それに対応すると受け入れやすいようです
  • この人がどういうことで怒りを覚えたのかを聴いていくと、それがわかると「その人が怒りを持つのは当然だな」と、理解可能になります。
  • 僕がよくやるのは「前の先生はどうでしたか?」「前の病院はどうでしたか?」と質問する。患者さんはあまり言いたがらない人もいるし、怒りをぶちまける人もいらっしゃいますけど、「どういう治療がどうだったのか?」「先生のどういう話に怒っているのか?」ということを具体的に聴いていくと、その患者さんの地雷が何かということがわかります。
  • 評価のエンドポイントを痛みにおくと失敗する
  • 私は、痛みの準備因子、発症因子、持続因子にわけて考えていくわけですけど、発症因子は今回事故というkとおで明らかですけど、準備因子に関しては、あなたがどう生まれてどう育ったかという生育歴を聞くことで参考になるし、持続因子については、あなたがどういう生活をして、どう働いて、どう対処しているかを根掘り葉掘り聞くことでわかる部分があると思います。今日は時間がないですけれども、よかったら一緒に考えていきましょう
  • 自己主張の力がすくないとき。お怒りの話を聴いているうちに、「それは大変ですね」ということで、「対人交流の技術というのをあなたは練習していかないと大変なことになりますね」という形で、対人交流のコーピングということでそちらにもっていく、そういうことをしている方もいます。
  • ペインクリニックで神経ブロックをしていた私が、対話による治療に変わって気づいたことは、自分は疼痛行動とか、痛みのやりとりをずっとやってきたわけですが、それは治療者が痛みという間口であるから患者さんはそれしか言わないのだということです。しかし「どこが痛いの?」(pain sensation)でなくて、「なんでお困りですか?」(suffering)に間口を拡げたら患者さんは何でも教えてくれる、というのがわかりました。

痛みのカウンセリング

田代雅文 痛みのカウンセリング ー承認から受容、そして変容に到る道のり ー 最新医学 2016;71(12):2482-2485

  • 脳梗塞で脚が麻痺して歩けなくなった患者のリハビリを例にとってみよる。「ある日突然に脚が麻痺した」という現実は受け入れがたいものである。「この麻痺さえなければ歩けるのに」と否認している間は歩けないままである。一方で「この脚は麻痺したんだ」と受け入れると、「リハビリをして歩けるようになろう」とか、「もう動かないのだから、車椅子を使おう」となって、移動できるようになる
  • 慢性痛においては痛みそのものが症状であるので、まっていても消失しない。慢性痛患者をみていると、痛みを受容したことを契機に軽快してくことを経験する。「この痛みさえなければ元の生活に戻れるのに」といっている間は、痛みも取れずに生活もままならないが、「だって、この痛みはあるもんな。ならばこの状態で生活していくにはどうすればいいのだろう」と考えて、なにか新しいことを始め、動きが生活が回復するに伴い、痛みも変容していく
  • 受容
  • Linehanによる受容の定義 受容とは善悪の判断をつけたり、執着したりせず、また事実を歪めずに、ありのままに経験すること」「こうあって欲しいとか、ほしくないとかといったことで曇らされていない、根本的な真理」「徹底的な受容とは、今この瞬間、この現実を分け隔てなく揺するという、全人格をかけた行為であると述べている
  • また、徹底的な受容の前提として、「苦しみの原因は、苦痛そのものでなく、苦痛を受け入れないこと」「現実に起こっている出来事が、起こるべきでないという考えからきている」「徹底的な受容するには、「ーーべき」という考えをすて、今この瞬間に何が起ころうとも効果的に関わること」と述べている
  • ここで患者を受容に導く方法として、承認戦略を紹介する。前項の「受け入れましょう」として失敗した事例に対しては、「痛みって耐え難いものですよね。受け入れ難いというお気持ちは自然だと思います」と、患者の気持ちを承認するのである
  • 治療者が患者の気持ちを受容したことで、患者が自分の気持ちを承認でき、「分かったもらった」体験から自己肯定感が生まれる。承認することで、生活を邪魔していた痛みが行きてきた証となる。異物感の強い「耐えられないもの」から、「だって、それは私そのものなのだから」と「耐えられるもの」に変容する
  • 慢性痛の難治化に関わる因子として、被養育体験での不認証(承認)環境が知られている
  • 承認のレベル
  • 1. 傾聴と関節
  • 2. 正確に反映する
  • 3. 言葉にされていないことを明確にする
  • 4. 理解できる理由に関して承認する
  • 5. 現時点で理にかなっているとして承認する
  • 6. その人を承認できる人として扱う
  • 「あなたは痛みで苦しんており、何も出来ないと感じているんですね。そうなるのは当然のことだと思います。そして、あなたを治せないと感じているときの私は苦しく感じています。一方で、あなたそのものはOKです。なぜならば、あなたには問題に向きあう力があると信じているから。そして、そう信じることで私もOKになれています。