牛田享宏、大須賀友晃、神谷光広、松原貴子 筋筋膜性腰痛症の病態と整形外科的治療 理学療法 2008;25(1):65-70

  • 腰痛は筋筋膜性のものが最も頻度が高いとされている
  • 慢性の筋筋膜性腰痛は、腱付着部炎のような病態や慢性筋疲労の他、椎間関節障害や椎間板ヘルニアが原因となって筋緊張が亢進し、引き起こされている
  • 起立時に上半身の体重の8割が椎間板に2割が椎間関節を介して下位椎体に伝えられる
  • 脊椎 椎体を中心とした前方要素と、椎弓椎間関節を中心とした後方要素にわけられる
  • 前方要素の神経支配 脊髄洞神経、交感神経交通枝 2髄節程度下位を支配 後方 腰神経後枝の枝
  • 筋肉から求心性に伝達される情報は主として筋紡錘からの位置覚情報と痛みとされている。その痛みの特徴は、皮膚の痛みが鋭く局在がはっきりしているのに対して、筋では鈍い痛みが多く、局在がはっきりしない
  • 慢性的な腰背筋の筋緊張の結果、横突棘筋の停止である横突起(乳様突起)、多裂筋の停止である仙骨後面や腸骨稜に腱付着部炎が生じることのもすくなくない
  • 筋筋膜性腰痛 疼痛部位の周囲の筋の緊張が亢進していることが多く、触診でも圧痛などを認めることが多い
    • 急性 過度の安静期間をとることは多くの観点から有益でない
    • 慢性 
  • 今後の課題
    • 腰痛の実際の治療を行う場合、局所における問題の他に、患者の生活背景(仕事、生活環境など)に基づく精神的問題も多い。特に慢性痛については精神的問題が痛みを増幅していることがすくなくない

松原貴子、新井健一、牛田享宏 筋筋膜性腰痛症の理学療法プログラム 理学療法 2008;25(1):71-75

  • 筋筋膜痛症候群では、過敏に痛み硬く触知されるこりおよび筋スパズムが筋の一部または数カ所に存在し、運動制限や筋力低下のほか、自律神経機能障害を併発する。
  • 硬いしこりとして感じる硬結には、筋線維に平行な帯状やひも状のもの、結び目状や結節状のものがあり、圧痛硬結や収縮硬結、または索状硬結ともいわれる
  • 硬結内の圧痛点はトリガーポイントとよばれ、圧迫によって離れた場所に関連痛を惹起することがある
  • 硬結は筋の終板帯にみられ、終板の機能障害、電気的活動亢進により局所的な単収縮反応を生じている。腰背部や臀部は、頚部肩甲部とならぶMPSの好発部位とされている
  • 筋筋膜に由来する痛みの末梢メカニズムとして、筋に対する過負荷や筋障害によって終板部で機能障害が生じると、終板で過剰分泌されるアセチルコリンによって持続的な筋収縮が生じ、さらに筋内血管の圧迫による虚血循環障害も重なり、エネルギーの不足枯渇に伴い、代償的に生じる発痛物質や増感物質により痛みがおこるといわれている
  • 筋筋膜性疼痛は安静時痛は少ない
  • 筋筋膜痛症候群のコアとなる病態は硬結とトリガーポイントである
  • 筋筋膜性腰痛の理学療法介入
  • 不必要に安静や固定療法を長引かせること(長期の不動化)は、筋萎縮や筋力低下のみならず、脊髄感作などの中枢神経系の可塑的変化をもたらし、慢性腰痛への移行を助長することのなるため注意が必要である
  • 筋筋膜性腰痛の理学療法では、原因となる筋障害、筋に対する過度の負荷や疲労などを除去または改善することが第一目標
  • 組織形態的背景からも筋の過緊張(筋硬結)と循環障害が本症の主因であるため、それらを改善するためには運動療法、姿勢や動作の再教育、指導(正常な筋活動すなわちモーターコントロールの再学習)、物理療法が必要である