運動による疼痛抑制(exercise induced hypoalgesia)のメカニズム

上勝也、田島文博、仙波恵美子 運動による疼痛抑制(exercise induced hypoalgesia)のメカニズム journal of clinical rehabilitation 31(5):455-464,2022

  • 健康の維持・増進に向けた統一標語には、「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」と運動の重要性が強調されている
  • EIH(exercise-induced hypoalgesia)とは、「運動中、または運動後に侵害刺激に対する痛覚閾値・耐性値の増加または痛覚強度の減少を特徴とし、痛覚感覚系が減弱する現象である」とされる
  • 痛みの慢性化にはmesocortico-limbic systemの機能不全が発症に基盤に存在すること、そして自発的に行う運動(voluntary exercise:VE)がmecosortico-limbic systemの正常化に働き、疼痛を緩和するメカニズム(EIH効果の脳メカニズム)がある
  • EIH効果の発現に有用な運動様式はランニング、ウォーキング等の有酸素運動(aerobic exercise)や等尺性運動(isometric exercise)等である
  • 損傷末梢神経や脊髄レベルでは炎症性サイトカインの産生抑制と抗炎症性サイトカインの産生増加がEIH効果の一つの側面を担っているようである
  • 運動による下行性疼痛抑制系の活性化は、EIH効果を生み出すメカニズムの一つとして広く支持されている
  • 内因性オピオイドシステム、セロトニンシステム、オレキシンシステム、マイオカインシステム、これらは下行性疼痛抑制系あるいはmesocortio-limbic systemを活性化し、両システムは互いに影響を及ぼしながらEIH効果の発現に関与すると考えられる
  • mPFC,Amyg,NAc,HIP,VTAからなるmesocortico-limbic systemは、痛みの認知的側面と情動的側面に影響を及ぼす脳領域を含み、痛みの慢性化に対して重要な役割を担っていると考えられている
  • GABAニューロンとVTA-DAニューロンとの相互作用は、痛みの慢性化をコントロールするうえで重要な役割を担うを考えられる
  • VEは脳報酬系を活性化し意欲を高めることでが知られているので、これらの結果はEIH効果の発現には、脳法集計を含むmesocortico-limbic systemが重要な役割を担うことを示唆している
  • VEはDMH-Orexニューロンを活性化して覚醒レベルを高め、またVE量に依存してLHA-Orexニューロンの活性化を高めて、VTA-DAニューロンを活性化させることで、EIH効果の発現に関与すると考えられる。