痛み・しびれにおける心理社会的要因の診かた

寺嶋祐貴、西原真理、牛田享宏 痛み・しびれにおける心理社会的要因の診かた MB Orthop 33(3):64-72,2020

  • 患者が痛みを訴えるとき、当然、何らかの侵害刺激による痛みが原因であることが多いが、多くの臨床医を悩ますのは、そこに器質的要因以外のものがどの程度関与しているかを評価することである
  • 身体症状症の新しい診断基準で特徴的であるのは、疼痛という症状に対して不釣り合いな思考、強い不安、過度な行動のいずれかが存在していることを主体としていることである。器質的な疾患の有無を問わない点も重要である。器質的疾患があったとしても極端に逸脱した行動がみられれば身体症状症と診断が可能であり、より臨床的に使用しやすい病名となっている
  • 小児の発達と痛みの関連のなかでも失感情症(alexithymia)については留意する必要がある。自分の感情がどのようなものであるか言葉で表したり、情動が喚起されたことによってもたらされる感情と身体の感覚とを区別したりすることが困難な病態である。身体の痛みと心の痛み(驚き、不安、悲しみ、悔しさなど)が区別できなくなると、弁別せず単に「不快な情動=痛み」という言葉として捉えてしまう。日常生活の表出できないストレスが常時痛みとなって表出されるため、過度な医療(絆創膏にかわって神経ブロックといった物理的な医療介入)をもとめる傾向になりやすい。これらは大人の心身症患者においてもしばしばみられるが、このような病態に対してはチームで分析した上で、治療者は常に患者を客観的に評価し、いかにして自己解決の報告に持ち込むかを考えていく必要がある
  • 社会的要因
    • 疼痛行動、疾病利得、家族問題・職場問題、補償問題