慢性疼痛に対する認知行動療法のエビデンスと将来の展望について

吉野敦雄、岡本泰昌、神人蘭、森麻子、山脇成人 慢性疼痛に対する認知行動療法エビデンスと将来の展望について PAIN RESEARCH 32:260-266,2017

  • 痛みに影響を及ぼす認知、行動
    • 認知 
      • 損失・無力的思考:身体的、社会能力的に大きな損傷をうけてしまったという思考 
      • 脅威的思考:危険なもので自分では対処できないという思考 
      • 破局的思考:考え得る最悪の結果が起こる可能性が高いと仮定する思考 
      • 自己・他者に対する否定的思考:損失・無力的思考との関連が強い。他者に対しても向けられる 
      • 自己効力感の低下:自主的に取り組み、それによって物事を変えることができるという思考。慢性疼痛では低下している。
    • 行動 
      • 引きこもり、活動低下:気分不良、筋肉の緊張、社会的孤立などを招く 
      • 自己主張能力の低下:自分の意思や要求を表明するための適切な自己表現の一つ 
      • その他:頻回の医療機関への受診、不必要に多い鎮痛薬・安定剤の使用など
  • 慢性疼痛では感情認識の能力低下を示す失感情症が病状の持続因子になっているという報告がみられている
  • fMRI 慢性疼痛患者においてCBT介入により眼窩前頭前皮質の活動上昇、下頭頂小葉と中心傍小葉の活動低下が認められた 
  • 眼窩前頭前皮質の活動と痛みの治療効果において負の相関がみられた治療前の後部帯状皮質の活動が痛み、不安の尺度と負の相関がみられており、慢性疼痛患者において治療前の後部帯状皮質の活動が低下しているほど、治療反応が良好であった。
  • 眼窩前頭前皮質は痛みの感覚の認知的処理において重要であり、後部帯状皮質は治療予測因子として重要な領域であることが示唆された