的場康徳 慢性疼痛患者の生きる意味への援助 ペインクリニック 2018;39(5):615-622
- 自律存在 自立と生産性に支えられて自律(自己決定)が成立する
- 関係存在 他者を介して、他者の関係を通じて自己(アイデンティティ)が成立する
- 時間存在 既存(過去と現状)と将来に支えられて現在(意味)が成立する
- 人間の生の存在構造は3つの次元で成立する
- スピリチュアルペインとは、自己の存在と意味の消失から生じる苦痛と定義される
- 無意味、無価値というスピリチュアルペインを訴えることは、同時に本当の意味あるもの、価値のあることを探し求める「内的自己の探求と超越」も行っている。
- 患者はこのプロセスを支えてもらうと、スピリチュアルコーピングが進み、物の見方を変える「価値観の転換」を行い、「新たな自己の存在の意味の回復」をしていく
- この患者自らスピリチュアルペインをやわらげていく営みがスピリチュアルコーピングであり、その営みの意味をわかって援助者が支えることがスピリチュアルケアである
- 痛みは常に意味をもっている。それゆえに、一つひとつの痛みは個人に特有のものであるといわれるように、痛みは常にその患者の体験世界で意味が構成される。
- 痛みの訴えには3つの側面が指摘されている
- 痛みの身体・知覚信号の側面
- 他者に痛みをわかってもらえない、分かって欲しいという関係性の側面
- もう意味がないという実存的な訴え(スピリチュアルペイン)
- 反復は、患者の語りの意味がわかって相手の言葉を活かして返す技術である。それに対して語りの意味もわからず音声だけを返す技術をオウム返しであり、反復とは似ていても異なる技術である
- スピリチュアルケアで患者が破局的思考の流れにのらないのは、苦しみを反復してもらい、自分の語りを見つめ直すプロセスが担保されることで、自己の存在と意味の回復を目指すスピリチュアルコーピングになっているからと考えられる
- 患者は苦しみを語りっぱなしでは破局的思考や絶望に陥る恐れがある。反復されてこそスピリチュアルペインに対するセルフコーピングは箚せられる
- 医師の共感的態度は患者の医師への信頼感を増し、患者が家族の満足度を上げることが指摘されている
- 特の慢性疼痛の臨床においては、患者ー医師関係が重要といわれるが、その意味は、例え痛みを治療的に和らげられなくても、関係性に基づく傾聴(援助的コミュニケーション)によって、援助の余地は十分にありえることを示唆する。