救助者として登場するもゲームを繰り返す線維筋痛症の2症例

井上敦裕、芦原睦、古賀七葉 救助者として登場するもゲームを繰り返す線維筋痛症の2症例 交流分析研究 2017;42(1):38-44

  • 症例Aのゲームは、「こんなに無理をしているのに」である
  • Aは「無理をして世話をしていたのになぜ叱られたのか、こんなはずではない」という思いを抱いた。そして仕方なく世話をやめ、結末として、「こんなに頑張っているのにわかってもらえない」というラケット感情を表出した
  • 症例B 相手のためを思って行動していたが、家族や仲間に迷惑をかけていると感じ、結末として「無理に仕事を引き受けて同じことを繰り返してしまうダメな自分」というラケット感情を感じることになった
  • Aがゲームを演じていた原因 生育歴や生活環境
    • 幼少期に受けた父親からの虐待や両親から見捨てられた体験が根底にある
    • 居場所のない家庭の中で、唯一母親的な存在であった祖母の介護をすることがA自身の居場所を作っており、祖母を亡くしたことが少なからずゲームを演じる原因として影響を与えていると考えられる
    • 「こんなに頑張っているのにわかってもらえない」というラケット感情を味わっており、そのラケット感情がストレスとなり疼痛の増悪に結びついていると推測される
  • Bがゲームを演じていた原因 生育歴や生活環境
    • Bは幼少期より支配的な姉に仕事を押し付けられ、面倒と思いながらも反発できずに引き受けていた。それを続けるうちに、頑張っていないと自分は認めてもらえないと考えるようになったことが仕事を引き受けることにつながっていると考えられる
  • ゲーム分析により自身の演じているゲームに気づくことのみでも症状の軽減にはつながったが、介入により行動変容がなされるとより効果的であると推察された
  • 両者とも始めは「救助者」として登場し、相手のためを思って行動していたが、途中で症例Aは「迫害者」に役割交換する「無理をしている型」、症例Bは「犠牲者」役割交換する「お節介型」のゲームを繰り返していた