笠原諭、松平浩、荒瀬洋子、村上安壽子、高橋直人、矢吹省司 慢性疼痛の臨床に必要な心理社会的評価尺度 MPI 最新精神医学 2017;22(2):103-108
- MPI;Multidimentional Pain Inventory
- 認知行動療法を慢性疼痛患者に適応する際に、直接的にターゲットになるのは、痛みの性状そのものでなく、そうした症状に影響を及ぼしている行動、認知、感情、環境などの媒介要因であり、こうした変数に変化を生じさせる方法を導入し、間接的に痛みの症状を改善させることが目的となる
- そのため認知行動療法の効果を高める際には、どのような媒介要因をターゲットとするかを明確にし、ターゲットに適合する治療技法を選択することが重要となる。
- また認知行動療法の効果は治療を行う対象やその時の状況において影響を受ける可能性があり、そうした治療効果の調整要因を明らかにすることによって、認知行動療法の効果を高めることや認知行動療法の効果がみられない患者の同定が期待される
- 媒介要因
- 調整要因
- MPIの3分類 Dysfunctional/Interpersonally Distressed/Adaptive Cooper
- Adaptive Cooper 痛みや情緒的な苦痛が低く、高い生活管理能力を有しているために適切なアドバイスのみででも行動変容を起こしやすい
- Dysfunctional 家族などの重要他者が患者の痛み行動に対して気遣いや義務の肩代わりなどの過保護な反応を示すことが多く、これを減じる介入(オペラント行動療法)が必要
- Interpersonally Distressed 重要他者から責められるような生活状況にあり、痛みで自分を罰することで批判を免れようとする傾向があるため、自己主張訓練のような対人技能の獲得が必要
- MPI
- 全61項目 3つのセクション
- セクション1 28項目 痛みの影響を評価
- セクション2 14項目 重要他者からの痛みに対する反応を評価
- セクション3 19項目 患者の活動を評価
- MPIの徳に優れている点としては、重要他者である家族や良かれと思い行っている支援が、図らずも患者の痛み行動を強化してしまっているかどうかを、セクション2で評価できること