承認(validataion):感情調節困難な患者との治療的関わりにおいての承認の意義

遊佐安一郎 承認(validataion):感情調節困難な患者との治療的関わりにおいての承認の意義 精神療法 2014;40(6):851-857

  • Linehanは承認を「セラピストが患者に対して、患者の反応は現在の生活において当然のことであり、理解可能なものだと伝えつことである」と定義している
  • Manningによる承認の定義は「真に理解可能な行動(感情、考え、行為)の一辺を見出して、それを理解可能だと伝えること」である。その際に相手の「自己構成概念」を尊重することの重要性も強調されている
  • 承認は相手を観て相手から聴いたこと、そして相手の反応と行動のパターンには本質的に妥当性を持っていることを言葉または反応で伝えること
  • 臨床的承認のために共感は必要であるが、それだけでは十分ではないと主張している
  • 弁証論的行動療法
  • Linehan M によって開発された、BPDなどで、従来治療困難例と考えられていた感情調節不全を基調とした様々な障害のための、多くの科学的エビデンスによってその効果が高く評価されている認知行動療法である
  • 感情調節困難 生物学的に強い感情反応を示しやすい傾向のある個人が、社会的環境から非承認される経験を繰り返すことで、すべてとまではいかなくても、多くの感情の調節が困難になってしまう
  • 承認の6つのレベル
  • レベル1 傾聴と観察
  • レベル2 正確に反映する
    • 「これ(この理解で)であっていますか?」と頻繁に問いかける
  • レベル3 言葉にされていないことを明確にする
    • いまだ言葉にすることができていない患者の感情や意味を言語化すること自体、強力な承認になることもある
  • レベル4 理解できる内容(必ずしも妥当でなくても)に関して承認する
    • 行動がその原因との関係で承認される。必要とされるすべての原因に関する情報はないまでも、患者の感情、考え、行為は患者の現在の体験、生理学的状態、そして今までの生活歴から、完璧に理解することができると伝えることである
    • (1)過去の学習歴、(2)現在の不適切な先行刺激、または(3)生物学的機能障害が原因だとして、その行動は十分に理解できると伝えることができる
  • レベル5 現時点で理にかなっているとしているとして承認する
    • 患者の行動がそれ自体、理にかなっており、患者の人生の目標に向けても正当化できる有意義なものであると伝えること
  • レベル6 その人を承認できる人として扱う:徹底的に真摯に
    • 患者を人としてあるがままに受け止める際に、個人としての強さと能力に注目し対応すること