慢性痛患者の心理アセスメントのキーポイント 慢性痛と怒り

田村雅文、有村達之、細井昌子 慢性痛患者の心理アセスメントのキーポイント 慢性痛と怒り 日臨麻会誌 2017;37(3):388-396

  • 痛みの強さそのものよりも理不尽感を治療対象とする認知的アプローチは、慢性痛患者において有用であると筆者は考える
  • ”取り返しのつかない損失を被った”という理不尽感の概念で説明すると、そもそも理不尽なので合理的に考えても解決不可能な問題であるから、損失については悲しむという”喪の作業”が役に立つ
  • placebo effect vs nocebo effect
  • 病歴を単にとるのではなく、これまでの医療機関や治療者との関係性を中心に聴取し、その上で医療不信や期待外れだったことを訪ねていくと、怒りが表出される。治療者がその感情を承認する形で治療関係を築いていくのである
  • ラケット感情とは、さまざまなストレス状況において経験されるなじみ深い感情であり、子供時代に学習され、親によって推奨されたもので、成人の問題解決の手段としては不適切なものである。Englishは、本物の感情を覆い隠す代理感情であると唱えている
  • 怒りは現在に関する感情である
  • 悲しみは過去に関する感情である
    • 治療者が「過去の損失に対するあなたの怒りは当然ですよ」と認証して、怒りの感情が消化されたころを見計らって悲しむことを提案し、患者が受け入れたらともに悲しむ作業をするというのは有効である
  • 恐れや不安は未来に対する感情である
  • 花岡 感情に時間的な順序をつけるために役立つ質問
    • あなたはこれから何がおこることを恐れているのですか?
    • あなたは、今、何を変えたいと思って怒っているのですか?
    • あなたは、何に対して、もう帰ることができないと悲しんでいるのですか?
    • 感情の時制と機能を理解し、あらためて本物の感情を体験し直し、それに沿った適切な行動を選択することにより、役に立たないラケット感情から抜けだすことができる