線維筋痛症患者が求める全人的医療とは

橋本裕子 線維筋痛症患者が求める全人的医療とは 心身医 2016;56(5):433-438

  • 怒り、過去へのこだわりが治療には大きな障壁となる
  • 線維筋痛症は簡単になおる疾患とはいえない上に、症状が多岐にわたり患者の言葉を理解することすら難しい。患者は不安と絶望で混乱しているので、自分の症状をうまく伝えることができない。誰にも自分の苦しみを理解されず孤立していく患者が増えているのが現状である
  • 一般的には今の検査技術では治療の手がかりを見出すのが難しいからこそ、痛みに焦点をあて、患者の実存に目を向けなければ道筋が見えてこないのではないだろうか
  • 線維筋痛症では死なないといわれているが、友の会約3000人中把握できただけで41名が自殺している
  • どんなに、苦しんでいても、見た目は元気そうにみえる。このギャップが大変患者を苦しめる。見た目にわからない、検査にも表れない。つまり「客観的でない」ということにされる。「精神科、心療内科に行け」といわれ、頭がおかしいと扱われる
  • 数年前までは患者が第一に望むものは「薬」であったが、最近は話しを聞いて欲しい、理解してほしいいに変わってきた
  • 患者が「治らない病気」と思い込むことが、治療の大きな妨げとなる。また医療者も「治せない厄介な疾患」と感じていればやはり、加療に積極的でなくなる。医療者間で成功例を共有する音が必要だと思う
  • 患者自身が社会生活の中で、「常態化」「pacing」、「持ちこたえ」、「身体の作り変え」を行って、痛みとの折り合いをつけている。ー静かな患者
  • 患者は「もっと支えて欲しい」と訴える反面、「一人にして」、「放っておいて」という矛盾した思いを抱えている
  • 「痛む人生」を治療者が受け入れてくれることが、「工夫」の一つ
  • 「こじれた痛み」の場合は、実存部分からよじれていてほぐすの簡単ではない
  • 解決できなくとも別の見方ができるようになることが重要
  • 過去の自分への見方が変われば、「世界と自分」の中で生きる意味を見いだせる