社会的疎外と慢性痛の転帰:「町医者の視点」からみた慢性痛の5症例

亀澤隆司 社会的疎外と慢性痛の転帰:「町医者の視点」からみた慢性痛の5症例 ペインクリニック 2014;35(3):379-386

  • 症例1、2とも神経ブロックのみでよくなったとは考えられず、医師が痛み認めたことにより軽快した考えられる
  • 医療機関も認知症のある高齢者の症状には、真摯に聞く努力もしていなかったのかもしれない。しかし、当院で患者の訴えを十分に聴き、解決策を提示することで患者との信頼関係を築けたのであろう
  • 症例2は両親の過干渉に対して、患者は自己主張できていないため、症状が遷延化して不登校につながったのかもしれない
  • この症例では徐々に施行時の痛みを体動で表現んできるようになってきた。このサインが自己主張ではないかと思われる
  • この患者にはもう一つ気になることがある。それは、家族の対応をである。この患者の家族には会ったことはないが、冷たい感じがした。患者は下肢が痛いのに朝5時に起きて、家族の弁当を作っていた。台所は寒くて、痛みが増強するのに一人で弁当を作らなくてはならない。果たしてこの時家族は一緒に起きていたのだろうか? 孤独感を感じたため痛みがひどくなり、睡眠障害に陥り、メンタルクリニック受診したのではないか
  • 私の経験では孤独が慢性痛を助長すると考えている。自分だけが取り残された敗北感、将来に対する不安と焦り、そして今のこの想いさえも話すこともない自分に対してのやるせなさが痛みの悪循環に陥らせてしまう。中にはその悔しさをバネに頑張る人もいるが、通常はその波に呑まれてしまう。それにより、痛みの治療が遅れ、慢性化してしまうかもしれない
  • コメント 細井昌子
  • 「患者さんの生活環境がイメージできるように話を聴く」ということは、心身医療において、もっとも重要な心理アセスメントのポイントの一つです
  • 家族の過干渉は、家族にとっても相当のエネルギーをひつようとするわけですが、そのエネルギーがプラスに作用しないばかりか、慢性痛の苦悩を増すというマイナスのエネルギーになるという事実を臨床的研究および疫学的研究で発見し今その結果を世の中に向けて発表していきたいと思っております
  • 過干渉と同様に、「ケアの不足」よる心理的苦悩という観点も重要です
  • わかっているけどやめられない行動の背景の苦しさを傾聴することがいかに重要であるかを改めて実感します