幼少期の虐待を背景とした根強い不信により維持されていた20年来の

西原智恵、河田浩、松下智子、安野広三、牧野聖子、須藤信行、細井昌子 幼少期の虐待を背景とした根強い不信により維持されていた20年来の慢性疼痛性障害に対する段階的心身医学的治療 慢性疼痛 2012;31(1):35-39

  • 支持的面接をくり返すなか、不信や敵意の背景となっている虐待歴が明らかになった
  • 慢性疼痛性障害患者ではしばしば激しい疼痛行動のため、周囲と交流不全に陥っている症例を経験する
  • 入院中の対人交流では同室患者の病歴を訊き出しては「たいしたことない」と否定する交流様式を続けていた。結果、同室者全員の病状が悪化し、患者は他患者全員から疎外されることになった。それまでは他者を否定することで自分を正当化する姿勢を続けていた患者も、病棟においてリアルタイムで起こったトラブルをきっかけに自身の問題点を直視せざるを得ない状況となり、自身が変わろうとする動機を持つことができた。
  • 交流分析に関する図書をつかった読書療法を通して「自他否定的な交流を身につけている」ことを意識化させ、その後に主治医との面接の中で、病棟での患者の言動を例に具体的に交流の問題点や目指すべき交流について取り扱っていった。
  • 本症例では、幼少期から自らの人権を侵害された体験をもとに周囲への攻撃性が合理化されたと考えられ、知的能力がある割に対人交流での一般常識とのずれが大きく、内省を導きにくい自体が生じていた。そのため、人間不信や協調性の問題が生じ、良好な治療関係性の構築が困難であった