ペインクリニシアンのためのパフォーマンス学

佐藤綾子 ペインクリニシアンのためのパフォーマンス学 ー傾聴における非言語的表現を中心として
ペインクリニック 2014;35(4):477-486

  • 医師が単に患者の言葉を聴くだけでなく、その心の中の痛みの感情まで目を凝らし、耳を傾ける必要がある。これがスピリチュアルケアで近年やっと多く指摘されるようになった医師の傾聴の営みである
  • 小川は日本慢性疼痛学会において、スピリチュアルケアの方法を、「傾聴、おうむ返し、その後の適切な沈黙、ともにいること」とし、発表のまとめとして、以下のように傾聴を位置づけている
    • 高齢化社会ストレスフルな社会で、慢性痛患者が増えている。その対応考慮するのは必須になっている
    • 慢性の痛みは鎮痛薬だけではコントロール出来ない
    • 人間の人間たる理由、「情動」とその現れ方を重視すべきである
    • 良好な患者(家族)ー医療者関係の確率は必須である
    • 痛みに関する正しい情報(知識、教育、情報)が必要
    • 患者、家族、そして医療者自身のスピリチュアルペインへの「気付き」が今後、必須な医療行為になるであろう
    • その最初の方法が「傾聴」である
    • ただ、医学的な見地からの毅然とした態度も併行して必要である
  • ここでの傾聴とは何か、患者が発信するこの痛みの感情のメッセージを、なるべく早期に聞き分けることにほかならない
  • 医療面接の一瞬一瞬ごとに患者の心の痛みのサインを的確に見つけ、それに対する適切なフィードバックを医師の具体的な自己表現の形に変えて、患者に返しに行くことが重要である
  • ペインクリニックにおける患者は自在な表現ができにくい状況にある
  • 言葉でなく何を聞けばいいのか、その解が「非言語的表現」にある
  • 医師は、こうした非言語的表現をすばやく的確に読み取ることで、正確な傾聴が可能になる
  • 傾聴の阻害要因が、「医師の多忙さ」である
  • 多忙な医師であっても、例えば患者の部屋に入室した最初の2秒間の顔の表情によって、「語られなかった喪失感、痛み、絶望感、未来への閉塞感、不安」などの否定的感情を、いち早く読み取れるということである
  • 多忙で表情にまで気を配れないと諦めてしまえば、真の傾聴作業はそこで終わってしまう