柴田政彦 複合性局所性疼痛症候群 Modern Physician 34(1): 57-59, 2014.

  • 治療行為そのものが痛み行動の強化因子になることがあるという事実を充分に知っておかなければならない
  • 短期的に痛みの消失を期待した診療を行うことは望ましくなく、痛みに関連した行動に焦点を当て、「痛み行動を強化しないように対応を気をつけながらサポートし、自身から社会に復帰しようとする意欲が出るのを待つ」という気の長い対応が望ましい
  • 複合性局所性疼痛症候群の場合には、第三者行為である場合がほとんどで、不満や怒り、疾病利得といった心因反応の中でも医療者が対応苦慮する感情や動機を伴っていることが多いのが特徴である。
  • したがって、治療の限界を前もって提示し限界を設定しておかないと、治療がかえって症状遷延に寄与してしまうことがある
  • 診療の進め方
    • 痛みの訴えに傾聴し、真摯な態度で診療する
    • 強い痛みの表出など破局的な行動に対しては、静かで冷静な対応を心がけ、治療によって痛み行動が強化されないように注意する
    • 受傷機転やその後の経過を詳細に聴き、「普通でない」と意識したのがいつ出会ったが聴き出す
    • 治療の過程で、l医者の説明をどう理解し、どのように感じたかを確認する
    • 家庭や仕事面での影響を経時的に聴取する
    • 最近の生活について標準的な過ごし方を聴く
    • 治療費や給与の状況について確認する
    • 損害賠償など加害者との状況を確認する さらに必要に応じて
    • 学歴と成績
    • 職業歴
    • 家族構成と家族関係
  • 三者行為をきっかけとする慢性痛の診療において治療者は、短期的に患者からポジティブな反応を期待しないほうがよい