人を動かす対話術 5

ASIN:9784844373223

人を動かす対話術 p174 受け止め方を変えるアプローチ

  • アーロン・ベック (1921-) 精神科医
  • 認知能力をもつ生命体は、刺激→認知→反応(感情、行動)というシステムを進化させてきた。適応的な反応ができるかどうかは、認知的処理にかかっているということになる
  • 認知に歪があると、適応に都合のよい感情的、行動的反応よりも、適応を阻害する反応が多くなってしまう。その結果、適応に支障が生じるが、その原因となる認知的処理の問題は、本人に自覚されていない。無自覚的に、つまり自動的に行われているからである。自動的に行われる認知的処理は、「自動思考」と呼ばれる
  • 認知療法での対話の目的は、この無自覚なプロセスの歪を自覚し、自動思考をより適応なものに修正することである
  • ベックは偏った認知の背後には、偏った信念があることを指摘している
  • 認知を修正しようとするとき、ただ表面に表れる認知の偏りだけを修正しようとしてもなかなかうまくいかない。根本にある間違った信念を修正するように働きかけないと、本当の変化は生まれないことも多い
  • 認知を修正しようとすると強い抵抗にあう
  • ライミング操作は修正を容易にする
    • 「怒らないできいてくれる?」「冷静に聞いて欲しいことがあるんだ」
  • 1何がきっかけとなったか、2どのような行動や感情的反応が起きたか、3それは、きっかけとなった出来事をどのようにうけとめたのからか、と順に振り返る
  • 認知療法でもっとも大事なのは、「どのように受け止めたから」の部分である
  • 「ほかにどんなふうに受け止めることができたと思いますか?」
  • 「じゃあ、どんな受け止め方をしていたら、もっとよかったと思いますか?」
  • 「大事なのは、悪い受け止め方のクセに気づいたら、同じパターンを繰り返さないように受け止め方を変えていくことです。こういうときに他にどう受け止めたら、もっとうまくいくでしょうか?」
  • よくみられるかたよった認知や信念
  • 信念
    • 二分的認知(白か黒か、全か無か)、過度な一般化、選択的抽出否定的認知、破局視、自己関係づけ、感情的論法
  • 偏った信念と関係するもの
    • すべき思考(完璧でないと価値がない)、自分の責任を果たさないと自分は無価値になる、じぶんは無能なので、人に頼らないと生きていけないという信念、自分はとりえがないので、誰も愛してくれないという信念、本当の自分を知られたら、誰も愛してくれないという信念、他人はいつか裏切るので信用出来ないという信念、失敗して傷つくくらいならチャレンジしない方がいいという信念
  • 深い傷を抱えているようなケースでは、認知の偏りだけを扱おうとしてもなかなか難しい場合もある
  • なぜ、そうした偏った認知や信念にとらわるようになったのかを、原因となった体験に遡って理解することが、回り道のようで結局、根本的な改善につながりやすいのも事実である。
  • そもそも偏った認知や信念はどこから由来するのだろうか。ベック自信、その起源について、「素養と養育の相互作用」に遡る必要があるとしている。その子のもつ素質的な感受性と拒絶や遺棄や妨害といった養育上の問題が不幸な組み合わせになったとき、「私は愛されない」といった否定的な信念を形成してしまうと述べている
  • そうした考えをさらに推し進めて、心理療法家のローナスミスベンジャミンは、その人が子どもだったときの親などの重要な他者との関係が、他の人との間でも再現されているのだと考える。そのことを自覚することから対人関係の修正をはかろうとするアプローチを発展させた。