身体化障害

船津浩二、池田真優子、曽我愛佳、白川浩 身体化障害 こころの科学 2013;167:23-28

  • 広義の身体化障害の診断の要点は、おおまかに以下のようなものとなろう。1 若年期または青年期に発症し、2かわりやすい多彩な身体愁訴が続き、3その持続期間は数年以上であり、4その症状は検査を適切に行っても説明できず、5ドクターショッピングを繰り返し、6著しい社会的・職業的な機能障害を引き起こしている
  • 身体化障害は虐待歴と関連があるとする報告があり、また身体化自身のリスクファクターとして、「家族機能や情緒的支援の少なさ」や「貧困、未婚または離婚、外傷体験」があげられる。このような背景と、身体化障害が女性に多いことや家族集積性とは関係があるかもしれない」
  • 身体化自体を「より重篤精神障害に進行していくことから逃れるための適応機能と考えることもできる」と指摘する。また「疾病行動の異常」と医原性について、高木は、「医師から繰り返し説明された、「異常なし」という判定を「見捨てられ」とい受け止めることによって、維持、強化されている可能性がある」と言及し、狩野は「症状をなんとかマネージしようとする患者の主体的努力の積み重ね」と見解を述べている
  • 医師自身が身体表現性障害の患者に対して怒りや不安などの否定的感情を持つこともある。その場合は、同僚に話を聞いてもらうことなどもよいだろう。「みずからの否定的な感情が治療を阻害すると考える医師は、その患者と長いかかわるをもつことを避けるべき」とい言葉はこころに留めておくとよい
  • 率直な態度で、「症状の直接的な原因となる重い疾患は見つかりませんでしたので、すぐに症状を取り除くことは難しいかもしれません。これまで症状を治そうと頑張ってこられたとは思いますが、その努力のつらさと苦しさによって、神経が余計に緊張して、ますます症状が強くなるという悪循環ができることもあります。そのため、しばらく様子をみられるのも一つの手でしょう。症状に対してうまく対処できるようになれば、もしかすると悪循環に陥らず生活のつらさが少しましになるかもしれません。コントールできるよう対処法を一緒に考えましょう。」と説明する
  • 実際はそれほどスムーズに治療が進まないことは先刻承知である。だが、その上手くいかなさを、患者だけではなく医師がどう感じ取って、受け止めていくかも大切ではないだろうか。それが医原的な干渉を薄める一つの工夫に通じるように思われる。