永田勝太郎 慢性疼痛患者の有する問題点ー全人的医療の視点から 慢性疼痛 2011;30(1):7-12

  • 慢性疼痛とは、「患者固有の生きざまの歪み」から発していると考えられる
  • 生きざまとは、患者固有の身体・心理・社会・実存的特異性である。実存とは、人間固有の存在感であり、生きる意味の追求、責任のある行動、自由性のある自己選択などを意味する。実存性を失った人が陥るのが、「実存的虚無」である。全人的医療モデルは、「身体・心理・社会・実存モデル」である
  • 慢性疼痛を訴えやすい性格傾向として、「痛がりやさん」pain prone personalityがある
  • pain prone personality
    • 慢性疼痛、痛みを強調する、依存性が強い・未熟な正確、特別扱いを要求する、外科的・侵襲的方法を好む(身体接触を好む)、自己・周囲を理想化する、一見、心理的な問題はない、治療者を誘う
  • 精神的に健常な患者でも、慢性の痛みが持続すると様々な心理的反応を惹起する。よく観られる反応は、抑うつ反応、怒り(潜在しているばいいと、顕在している場合がある)、医療不信、破局化思考である
  • 失体感症・失感情症が基本にある過剰適応群と適応不全に陥っている不適応群がある。前者を心身症型、後者をPTSD型と読んでいる。PTSD型には、過去の被虐待歴、戦争体験、交通事故などがある。この両者を分類するためには、医師−患者関係が充分構築されないと明らかにならない
  • 特に実存的虚無感は重要である。なぜなら、自殺関連事象であるからである