複雑系としての痛み

北原雅樹 複雑系としての痛み ペインクリニック 2011;32(4):477-478

  • UWで始まった集学的痛み治療は還元主義の否定(と全体論の肯定)という考えに強く影響されている。
  • 複雑系とは、多数の因子が関係してシステム全体の振る舞いが決まるシステムにおいて、各因子の相互作用のために、還元主義的手法(全体的な現象をより部分的な現象に分け、それぞれの部分を単純な法則や原理に落としこむことによって全体を理解したとする、今までの科学がとってきた基本姿勢)ではシステムの未来を予測することが困難な系をいう
  • 「痛み」はまさに複雑系であろう。すると、例えば、痛みの原因を考える時に、器質性と心因性とを分ける意味があるのだろうか?あるいは、痛みの治療法の有効性を調べるために、他の条件を一定にして、注目する条件だけを変化させるという方法論は、本当に「有効」なのだろうか?
  • 実際、臨床の場では、どうにもうまく治療が進まない難治性慢性疼痛患者に対して様々なアプローチを試みていくうちに、ある時ヒヨッと急に良くなってしまう、ということがしばしば起こる
  • (いくつかの治療の)複合効果が「ある一線を超える」とでもしか表現をしようがない
  • 複雑系においては、「複雑な現象を複雑なまま理解しようとする」ことが必要だといわれている。しかし、それを痛みの、臨床・教育・研究でどのように実践すべきか、筆者にはまだ明確な答えは見えていない