住谷昌彦、山田芳嗣、宮内哲 幻肢と幻肢痛とは clinical neuroscience 29(8);925-929;2011

  • 幻肢に合併する病的な痛みは幻肢痛と呼ばれ、その発症機序は末梢神経系と脊髄での異常な神経興奮に加え、視床や大脳皮質の体部位再現地図の機能再構築が考えられている
  • 幻肢を随意に運動することができない患者では幻肢と健常肢の運動強調は観察されない
  • 幻肢患者を対象に両側上肢の運動強調パターンを評価した研究では、幻肢を随意に運動することができる患者は幻肢に痛み(幻肢痛)を伴っておらず、一方幻肢を随意に運動できなかった患者は幻肢痛を伴っていた。さらに、幻肢の随意運動を伴わない幻肢痛患者が幻肢の随意運動を獲得すると同時に幻肢痛が消失したことも報告されています。
  • このことから、われわれは「幻肢が随意にコントロールできるような”脳にとって健常な肢”として存在すれば、生体の警告信号としての病的疼痛(幻肢痛)がおきないのではないか」と考えてた
  • 「幻肢の随意運動を獲得させることによって、幻肢を”脳にとって健常な肢

”へと学習させる」ことの治療展開の可能性を展開した

  • 幻肢の発症機序としてneuromatrix理論(自己の身体を認識する機構が中枢神経系にあり、身体に欠損がおきてもその認識機構が存在するために幻肢感覚・幻肢痛が出現するという仮説)が提唱されているが、body parts coding networkがneuromatrixを構成するのではないかとわれわれは考えている
  • 脳機能画像研究からは、このような鏡療法による随意運動獲得時には運動前野の賦活化を伴い、minor neuron systemの関与を示唆する。さらには、鏡療法のように視覚入力による幻肢の運動訓練を行うことによって、一次体性感覚/運動野での患肢を表象する体部位再現地図が拡大することが明らかにされてきた
  • 一次体性感覚/運動野の体部位再現地図の機能再構築は幻肢に痛みを伴う患者だけに観察されるため、鏡療法による体部位再現地図の機能再々構築が疼痛緩解につながったものと考えられる
  • 鏡療法によって自己受容感覚に関連した性質の痛みは有意に減少したが、皮膚表在感覚に関連した性質の痛みにはあまり効果がなかった