変形性膝関節症

池内昌彦 変形性膝関節症 MB Orthop 2011;24(5):83-89

  • レ線でOAと診断されても、痛みを伴うものはわずか20-40%程度であり、X線学的膝OAの重症度と痛みの程度は乖離している
  • 軟骨が摩耗あるいは骨が増殖した状態そのものは、かならずしも痛みの発生とは関係しない
  • Woolheadらは、夜間安静時の痛みは大部分(81%)の患者が訴えており、OAの病期とは関係がなく手術適応の指標として疑問であると報告している
  • 安静時や夜間痛が主体の患者においては、膝関節局所の炎症が主因のことが多いが、中枢神経系の感作の要素が深く関与していることもあり注意を要する
  • 膝関節の慢性的ないたみは、筋肉や骨などの深部組織由来の痛みと共通する性質を有している。すなわち、皮膚の痛みと比べると局在がはっきりしない、鈍い、不快、長引きやすいといった特徴がある。
  • 同じような画像所見を呈していても痛い膝と痛くない膝がある。その違いはなにか?後述する末梢感作とこれに続発する慢性重症例の中枢感作および心理社会的要因と考えている
  • 膝関節局所の構造異常と痛みを短絡的につなげることは危険であり、神経系の変化および心理社会的背景にも眼を向けることが重要である
  • 膝OAの痛みは患者の活動性によっても大きく変動するが、活動性だけでなく、新rに状態もOA膝の痛みの変化に関与している。
  • 抑うつ状態や破局的思考を持つ膝OA患者への手術単独による治療は、効果があまり期待できない
  • 膝関節鏡手術の最も大きな問題は、画像で見られる半月板の断裂像と症状の関連性が不明なことが多い点である
  • 膝骨切術は、バイオメカニクス的異常を是正する目的に行われているが、バイオメカニクス的異常と疼痛は無関係なことも多いことがこの手術方法の抱える問題点である
  • すくなくとも、術後に続く痛みを訴える患者に対して、「人工関節は問題ない。痛いはずがない」という説明は避けるべきである。
  • 人工関節手術をしても、痛みの入力源は膝局所にたくさん残っており、さらに神経系・心理社会的要因が主に関係している痛みも少なからず存在する。こういったところの認識と対処法がもとめられている。