腰痛のナゼとナゾ

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  • p18 椎間板ヘルニアが画像で認められても、それが必ずしも痛みを起こしているわけではないことが明らかになってきているのです。
  • p24 従来のように「ヘルニアの存在=腰痛の原因」とする考え方を否定する研究結果が相次いでいます。
  • p30 物理的な骨や関節などの老化、変性が腰痛に関係していることは事実ですが、それが腰痛に直結しているという証拠はないのです
  • p31 私は、腰痛の患者さんで肥満度が高い場合に、肥満に合併している病気の症状のひとつとして腰痛があると考えたほうが自然ではないかと思っています。
  • p40 腰痛には複雑な因子が絡んでいると思われますが、この非特異的腰痛には心理的因子と社会的因子が大きく影響していることが明らかになっています
    • 心理的因子 不安や抑うつなど精神的なこと
    • 社会的因子 仕事のことや社会的な立場、あるいは子供の教育や夫婦不和といった家庭環境 例えば、一生懸命仕事に取り組んでいるのに評価されない、中間管理職で上と下の板ばさみになっている、自治会の会長を無理やり任されているなど誰もが社会から受けている圧力のことです
  • p42 慢性腰痛に多い性格傾向
    • 完全主義のタイプ、逃避するタイプ、サド・マゾヒズム傾向を持つタイプ
  • p46 腰痛の発生や持続と心理的苦痛には関連性がある。
  • 腰痛のためにできないことが多く、そのため人生がうまくいかないと訴えているうちに、腰痛のために人生がうまくいかないのか、人生がうまくいかないから腰が痛いのか本人でもわかならなくなる方もいるくらいです。私には、腰痛を訴えているのではなく、「腰痛」を使って感情表現しているようにも思えるのです。
  • p52 一昔前は、脊椎に障害があり、それが原因となって痛みを起こしていると顔が得られていました。つまり、腰痛は腰だけの問題と捉えられてきました。一見合理的な説明のようでしたが、急性腰痛についてはうまく説明できますが、慢性化した腰痛をうまく説明できないことが分かってきたのです
  • そして、現在は、腰痛の悪化や慢性化には、かなり早期のうちから心理・社会的因子も大きく影響していることがわかり、腰痛は「生物・心理・社会的疼痛症候群」として考えられるようになりました。これは、心理・社会的因子だけが原因だという意味でなく、従来からいわれている脊椎の障害も含めて様々な因子に加え心理・社会的因子も影響して発症する病気と理解されています。
  • p78 こういう事実から考えると、自分でコルセットをつけることにより安心感がある、明らかに痛みが和らぐなどの効果があるなら装着すればよいのではないかと考えます。
  • p87 ヨーロッパの慢性腰痛ガイドライン 効果が期待できるのは認知行動療法運動療法
  • 「持続する腰痛患者さんが痛みのために活動を避けていたら、徐々に体を動かすことが少なくなり、凝りや筋力低下で腰痛が悪化する悪循環に陥ってしまう。患者さんにこと悪循環に気づかせるためには、認知行動療法にもとづいた個別またはグループでのセラピーが有用であったことがわかった。腰痛のため避けていた運動をふたたび楽しみ、その恩恵を受けられるようにした」
  • p97 丹羽真一先生「腰痛があってもいいのでないでしょうか。例えば一ヶ月に一回だけ医療機関で医師とはなして、「ああ、また頑張ろう」と思って、それでなんとかその患者さんの生活が回っていれば、それでいいのではないでしょうか?それもまた医療ですよ」ともいわれます。
  • これを始めて聞いた時正直、驚きました。わたしたち整形外科医は痛みの治療ばかりを考え、しかも短期間で「答え」をだそうとしていたのです。苦悩や苦痛まで治療するのなら、長期的に腰をすえて取り組まなくてはなりません。治療の目標を、「痛みの内生活」でなく「すこしくらい痛くていい、日常生活ができればいい」に切り替えることが必要なのです。
  • p103 腰痛と上手につきあうヒント
    • 腰痛が起きたらまず医師を受診し、重い病気が隠れているかどうかを調べてもらいましょう
    • 安静にしているとかえって治りが遅くなります。可能な範囲で日常生活を続けましょう
    • 背骨や椎間板の変形が腰痛の原因かどうかは証明されていません。医師に変形しているといわれても、不安になることはありません。
    • 慢性腰痛は、“かぜ”のように繰り返し起こりますが、繰り返すたびに痛みが増したり悪化したりするおそれはありません。
    • 治療のゴールは日常生活が送れることです。自分自身の感覚を大切にし、“快適”と思える生活を主体的に作っていきましょう
    • しつこい腰痛は心理・社会的因子が影響していることもあります。自分にとっての腰痛の意味を考えてみるのも役立ちます。腰痛が気づきを与えてくれると、前向きに肯定的に受け止めましょう
  • p114 自分の努力しだいで腰痛は治っていくことが確認できると、「人は変われるものなのだ、自分を変えるのは自分しかいない」ということに気づき、人生まで明るく開けてくるというケースが実際にあります。「腰痛があってもいいのではないか」「腰痛があったから気づけた、ありがたい」という意識さえ持てるようになり、その意識は腰痛の改善効果をさらに高めるでしょう。