慢性痛リハビリの臨床

本田哲三、本田玖美子、高橋理夏 慢性痛リハビリの臨床 現代思想 2011;39 8月号 p126-134

  • 慢性疼痛プログラム遂行上のポイントと現場スタッフの手触り
    • 1)安易に「心因性」と決め付けない、2)患者さんにとって痛みはとりあえず「真」であると受け止める、3)チーム全体でアプローチする、ことをモットーとしてきました。
    • 患者さんには、4)「医療従事者がすべての痛みを取り除けるわけではない」、5)「痛みがあってもそれなりの身体活動はかえって痛みを減少させる」、6)「痛みがあってもそれなりに生活を充実させることは長期的には痛みの軽減につながる」ことを繰り返し伝えるように心がけています。
  • 患者さんたちは、当初多くは治療スタッフに依存的で「魔術的」な回復を期待してプログラムに参加します。そこで、「医療従事者がすべての痛みを取り除けるわけではない」ことを指摘されると、一時的に抑うつ的になります。しかし、スタッフ全員が力を合わせて患者さんが前向きに生きて行くことをサポートしていることを実感した時、患者さんは改めてプログラムの課題に集中し実際に体力が回復していくことを体験します。さらに、MSW部門の介入によりプログラム終了後の生活を現実的に思い描くようになっていきます。
  • 慢性痛とは、軽微な器質的損傷による侵害刺激+脳機能変調(可逆的)+(過度の安静の結果としての)二次的体力・認知機能低下(廃用)、と私共は理解しています。
  • 脳機能変調の直接の外因は、社会的ストレス(私共が対象とすることの多い中年の患者さんでは、女性は配偶者との関係、男性では職業上のトラブルが多い印象)であり、素因としては幼少期における心的外傷体験(Elie D, AL-Chaer and Weaver SA 2009)による疼痛行動易発現傾向が考えられます。