疼痛管理

細川豊史 疼痛管理 医学のあゆみ 2005;215(12,139:987-993

  • 我慢と忍耐を美徳と考える国民性 いつしか痛みは我慢すべき対象であるという認識が定着してきた
  • 痛みは精神的に人を苦しめ、ときには自雑をも選択させる場合がある
  • 早期からの適切な疼痛管理が重要
  • 痛みの分類 急性痛、慢性痛、がん性疼痛
  • 急性痛
  • 著者はまず、即効性のジクロフェナック(ボルタレン)座薬か静注用のNSAIDS(ロピオン)の投与で効果判定を行うことをお勧めする
  • ハイペン、レリフェンなどは平均的日本人では通常使用量の1.5-2倍量を使用するのがコツであり、投与量がしゅくないと効果が期待できない
  • 単純な急性痛も放置されると悪化遷延、複雑化し、やがて慢性疼痛となることが分かってきている
  • 痛みの悪循環
    • 引き続く痛み刺激は脊髄反射として疼痛部位の運動神経を興奮させる。運動神経興奮は筋を緊張させ、筋肉はここで多くの酸素や栄養素を消費する。本来ならこれに対応して、同部の血管が拡張し、その消費に合わせた血流増加が確保されなければならない。しかし、痛み刺激は同時に疼痛部位の交感神経をも刺激興奮させ、その強力な血管収縮作用によって疼痛部位の血液供給を大きく低下させる。このため、疼痛部位には極端な局所の酸素欠乏、および栄養不足をしょうじることとなり、異常な生理的状態となったこの部位に多くの内因性発痛物質が生成させてくる。この発痛物質が知覚神経末端を刺激して新しい痛みをつくりだす。この新しい痛みは元の痛みに加重され、さらなる反射とそれにともなう発痛物質生成を促し、つぎつぎに新しい痛みを生じさせてくる
    • 早期にNSAIDSなどの鎮痛薬でこの痛みがコントロールされていれば小さな痛みですんだものが、それを放置することで、より大きな痛みになってしまうのである
    • 神経ブロックは、交感神経を遮断し、血流を回復させ、運動神経を抑制し、筋緊張を抑えるなどの作用により、蓄積した発痛物質を洗い出すことで多大かつ長時間の効果を発揮することができる
  • 慢性疼痛は生理学的は、RAのように侵害受容性疼痛が持続している侵害受容性慢性疼痛、またCRPS、帯状疱疹後神経痛に代表されるニューロパシックペイン(神経因性疼痛)、最近では身体表現性疼痛障害とも呼称される心因性疼痛の3つに分類されている
  • 痛みの治療には早期から十分かつ適切な疼痛管理が重要であることがご理解いただけたと思う