「やめられない」心理学―不健康な習慣はなぜ心地よいのか (集英社新書 (0439))
- 作者: 島井哲志
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/04/17
- メディア: 新書
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- 「やめられない心理学―不健康な習慣はなぜ心地よいか」 集英社新書 0439島井哲志
- p138 第六章 心と健康状態
- 痛みの経験は、多くの認知処理に影響をもたらす。たとえば慢性的な痛みを経験している人は、痛みを自分でコントロールできないと認知するようになる。この認知は、自分に痛みに責任がないという考えと、自分自身に望みがないのだという自己評価につながっていく。そして、自分のおかれている状況や自分自身への否定的な評価の結果として、全般的なやる気のなさ、不活発さがもたらされる。反面、二次的には刺激に対しての過剰反応などの行動傾向がもたらされると考えられる。
- 痛み対して否定的な認知をもてば持つほど、痛みの経験という困難を乗り越える努力をしない傾向が強くなり、心理的な悲嘆が強くなる。さらに、そのような認知的な評価が、行動や心理状態に大きな影響を与えるようになる。
- 痛みへの能動的コーピングを用いている人たちの方が、受動的コーピングを用いている人たちより、痛みの訴えや機能障害が少なく、抑うつ状態にもなりにくいことが知られている。
- 認知的コーピング
- 積極的 何か楽しいことを考える気晴らし思考、痛いのではなく鈍いと考えるようにする痛みの再解釈、自分は痛みに勝てる!と自分に言い聞かせる自己教示
- 消極的 痛みに注意を払わないといった痛み無視、お医者さんがいつか治してくくれるだろうと信じる願望的思考、痛みに自分が打ち負かされてしまうという破滅思考
- 日常的に感じる痛みに程度が非常に強い人たちではコーピングとしての破滅思考が顕著に多いこと、逆に日常的な痛みの経験の程度が弱い人たちでは自分を励ますこと、また痛みの程度と頻度が増すにしたがって抑うつ傾向が高くなることが示された
- 痛みの程度がひどくなれば抑うつ傾向が強くなり、回避型のコーピングが用いられやすいことが示されている。
- 痛みを本人がどう評価し、どのような予期をしているのか、その痛みがどこから来ているかについての本人の固定的な考えという「信念」が、痛み経験そのものや情緒状態、そして行動を決定するきわめて重要な要因であると考えているのである。
- 痛みという包括的な理解はまだ先のことだ。しかしながら、痛みを単なる身体的な損傷と考えるのでなく、その経験をどうとらえ、どのように対処するかプロセスを同時に考えることが、痛みの経験の理解とマネージメントに重要であることは間違いがない
- 人間にとって、若いうちに自分自身が人生の出来事に影響を与えることができるという経験をし、コントロールできるという信念を獲得することは、その後の人生において健康を守ることにつながると考えられる。自分は人生の主人公であり、人生を切り開けるという信念を持つ人は、より健康でいられるのだ。